主電動機


主電動機(しゅでんどうき)は、電車や電気機関車などの走行のための動力を生ずる電動機(モーター)である。ほとんどの場合台車内部におかれ、歯車を用いた駆動装置によって輪軸に回転を伝達する。




目次





  • 1 概要


  • 2 方式分類

    • 2.1 電動機方式


    • 2.2 駆動方式



  • 3 日本における主な主電動機

    • 3.1 電車用

      • 3.1.1 国鉄


      • 3.1.2 私鉄


      • 3.1.3 JR



    • 3.2 電気機関車用

      • 3.2.1 国鉄


      • 3.2.2 私鉄




  • 4 脚注


  • 5 参考文献


  • 6 関連項目




概要





国鉄205系電車用MT61主電動機


電車等の電動機には電動発電機(MG)などに用いられるものもあるが、走行用のものを特に主電動機と称する。加速などの際には印加電圧などを主制御器などの制御装置から制御される。また発電ブレーキ、回生ブレーキなどの際には、発電機として作用させられて走行エネルギーを電力に代える場合もある。


主電動機の特性としては、次のようなことが望ましい。


  • 特に起動時および低速でトルクが大きいこと。最もトルクが必要なのは起動時であるため高速域より重要。

  • 幅広い速度域で性能を発揮でき、速度(=回転数)の制御が容易であること。

  • 起動時や大負荷時に過大な電力を必要としないこと。

また電車などの主電動機は床下の台車に取り付けられることから、床下の高さや軌間によって大きさが制約されるので、なるべく小型で大きな出力やトルクが得られることが望ましい。



方式分類



電動機方式


詳細は電気車の速度制御#電気車と電動機のとおりであるが、主電動機の方式として過去から現在にわたって多く用いられているものは次の三つである。



  • 直流整流子電動機 - 特に過去には直巻整流子電動機が多かった。起動時や低速でトルクが大きく(ただし抵抗を併用)高速になるにしたがってトルクが減少していくという電気車に適した特性を持ち、制御技術としては比較的古くから確立している抵抗制御による速度制御が容易なため広く用いられた。ただし整流子の存在によりある程度以上の回転数にすることができず、保守にも手間がかかる。また抵抗制御では一定の電力を熱として捨てているためエネルギー効率が低く、エレクトロニクス技術の進展により他の方式に移行していった。界磁チョッパ制御では、複巻整流子電動機が用いられる。


  • 単相整流子電動機 - 商用周波数による交流電化には向かず、日本では例が少ない。


  • 三相誘導電動機 - 電源の周波数で決まる速度から大きく変えられないため、かつては利用が難しかったが、パワーエレクトロニクスの発達で自由に周波数を変えるVVVFインバータ制御が実用化され、広く用いられるようになった。直流電動機と比較すると、整流子がなく構造が簡単で保守が容易になり、整流子の分のスペースが必要ないため幅に制約のある台車内でも大出力にしやすく、回転速度を上げて同じ出力でも小型にしやすいなどのメリットがある。


  • 無整流子電動機 - 鉄道車両への採用例は少ない。


駆動方式


電車の場合、ほとんどの場合歯車式の駆動装置が用いられ、その方式の分類は主電動機の構造にも直接反映する。大きく分けると次の2つになり、これは主電動機の台車への取り付け方式の分類でもある。(詳細はそれぞれのリンク先を参照)。


  • 吊り掛け駆動方式

  • カルダン駆動方式

電気機関車の場合、特に古いものでは歯車式以外のさまざまな形式の伝達装置が用いられることもあるが、一般には吊り掛け駆動方式がよく用いられる。その他、ブフリ式のように車体の床面に主電動機を置き、特殊な伝達装置やロッドによって車輪を駆動する方式もある。



日本における主な主電動機


日本の国有鉄道では主電動機の形式にMTを用いたが、これは"Motor for Traction"の略である[1]



電車用



国鉄


MT4形


ゼネラル・エレクトリック社製GE-244A(端子電圧675V時、定格出力85kW、定格回転数890rpm)の省制式形式称号。国鉄デハ33500系電車#概要を参照。

MT7形,MT9形,MT10形,MT12形,MT13形,MT14形

端子電圧675V時、1時間定格出力100kW、定格回転数635rpm(全界磁)という性能の電動機を、順に日立製作所,芝浦製作所,東洋電機製造,メトロポリタン=ヴィッカース,三菱電機,奥村製作所の各電機メーカーが競作したもの。

MT15形

端子電圧675V時、1時間定格出力100kW、定格回転数653rpm(全界磁)。鉄道省と製造各メーカーの共同設計により、新規開発で国鉄30系電車に採用された。国鉄30系電車#主電動機を参照。

MT30形

関西私鉄より小出力の電車ばかりであった鉄道省で登場した大出力形。モハ51形の出力増強形であるモハ54形などに用いられた主電動機。端子電圧675V時定格出力128kW(750V換算では142kW)、定格回転数780rpm(全界磁)[2]

MT40形

端子電圧750V時、定格出力142kW、定格回転数870rpm(全界磁)。電機子軸受をコロ軸受とした。重量は約2t[2]。国鉄63系電車#主電動機を参照。以上は吊り掛け駆動方式。

MT46A形


新性能電車用の初の標準電動機。旧形電車に用いられたMT40形より大幅に小型軽量化、高速回転化したもので、重量は660kgで約1/3、端子電圧375V時、電流300A、出力100kW、回転数1,860rpm(70%界磁)、中空軸平行カルダン駆動方式。国鉄101系電車#主電動機を参照。

MT50形


国鉄101系電車910番台(電力回生ブレーキ試作車)に使用。

MT54形

端子電圧375V時、定格回転数1,630rpm(全界磁)、定格電流360A、最高回転数4,320rpm。定格出力120kWでMT46A形より20%の出力向上。国鉄165系電車#165系を参照。

MT55形

1時間定格出力110kW, 375V, 330A, 1350rpm(85%界磁)、最高回転数4,400rpm。国鉄103系電車#走行装置を参照。

MT57形

1M方式。国鉄クモユ141形電車および国鉄143系電車に使用。

MT58形

定格出力120kW、定格回転数2100rpm(全界磁)。国鉄381系電車#電源・制御機器を参照。

MT60形

定格回転数1850rpm、最高回転数4850rpm、出力150kW。国鉄201系電車#電源・制御機器を参照。

MT61形

端子電圧375V時、定格回転数1,530rpm、定格出力120kW、弱界磁率最大35%、最高回転数4,600rpm。国鉄205系電車#主電動機を参照。

MT63形

端子電圧1,100V、電流100A、定格回転数2,200rpm、定格出力150kW。最高回転数6,000rpm。三相誘導電動機。国鉄207系電車#台車・機器を参照。

MT64形

端子電圧750V時、定格回転数1,530rpm、定格出力120kW、弱界磁率最大38%。国鉄213系電車#主要機器を参照。


私鉄


HS-262-AR形

端子電圧600V時、1時間定格出力150kW、定格回転数720rpm。日立製作所製。

MB-98AFG形

端子電圧750V時、1時間定格出力75kW、定格回転数890rpm。三菱電機製。与えられた国鉄形式はMT34形。

MB-115AF形

端子電圧750V時、1時間定格出力93.3kW、定格回転数900rpm。

MB-389BFR形

端子電圧750V時、1時間定格出力150kW、定格回転数1,000rpm。

SE-139D形

端子電圧750V時、1時間定格出力93.5kW、定格回転数998rpm。

SE-146形

端子電圧750V時、1時間定格出力170kW、定格回転数810rpm。

TDK-527-A形

端子電圧750V時、1時間定格出力149.2kW、定格回転数805rpm。

TDK-529-A形

端子電圧750V時、1時間定格出力149.2kW、定格電流222A、定格回転数710rpm、連続定格出力170kW。重量は約2t。

TDK-553-A形

端子電圧750V時、1時間定格出力93.25kW、定格電流142A、定格回転数950rpm、弱め界磁率は最大で64%。

TDK-553-EM形

端子電圧750V時、1時間定格出力110kW、定格回転数955rpm。TDK-553-A形の絶縁部分などに改良を行い性能を向上させた。

WH-556-J6形

端子電圧750V時、1時間定格出力75kW、定格回転数985rpm。WH社製造の高速電車用の電動機である。国鉄形式はMT33形。なお、芝浦製作所が製作したSE-132B形はコピー品である。

WH-586-JP-5形

端子電圧750V時、1時間定格出力127kW、定格回転数815rpm。以上は吊り掛け駆動方式。

SE-518形

端子電圧750V時、一時間定格出力110kW、電流162A、定格回転数2,000rpm、最高許容回転数4,500rpm、最弱め界磁率50%。直角カルダン駆動方式。

TDK806/1-A形

端子電圧375V時、一時間定格出力100kW、定格回転数1,800rpm、最高許容回転数4,320rpm、最弱め界磁率50%。中空軸平行カルダン駆動方式。

TDK-807-A形

端子電圧375V時、一時間定格出力110kW、定格回転数2,250rpm、最弱界磁率35%。


JR


C-MT66A形

端子電圧1,100V時、電流125A、周波数86Hz、一時間定格出力185kW、定格回転数2,525rpm。三相誘導電動機。

MT73形

一時間定格出力95kW、レブリミット5,800rpm。三相誘導電動機。

MT74形

一時間定格出力120kW。かご形三相誘導電動機。

MT75形

一時間定格出力140kW、最高回転数5818rpm、重量560kg。かご形三相誘導電動機。


電気機関車用



国鉄


MT11形

端子電圧540V時、定格出力187.5kW、定格回転数350rpm。端子電圧750V時、定格出力258.75kW、定格回転数530rpm。

MT17形

端子電圧675V時、定格出力230kW、定格回転数682rpm。

MT19形

端子電圧675V時、定格出力210kW、定格回転数620rpm。

MT42形

端子電圧750V時、1時間定格出力325kW(470A)、定格回転数800rpm。

MT43形


国鉄EH10形電気機関車#主電動機参照。

MT49形

端子電圧750V時、1時間定格出力400kW(575A)、定格回転数1,180rpm。重量2,200kg。クイル式駆動方式。

MT51形

端子電圧1,500V時、1時間定格出力600kW(430A)。WN駆動方式。国鉄EF30形電気機関車#主電動機

MT52形

端子電圧750V時、1時間定格出力425kW。端子電圧900V時、1時間定格出力475kW、定格回転数1,100rpm。重量2,800kg。電機子絶縁強化を行ったMT52A形や電機子軸直径を大きくとったMT52B形が改良型として存在する。東京芝浦電気が現設計を担当した[3]以上は吊り掛け駆動方式。

MT53形


国鉄EF80形電気機関車用。

MT56形

端子電圧750V時、85%界磁で1時間定格出力650kW、定格回転数1,200rpm。中空軸可撓吊り掛け式。国鉄EF66形電気機関車#主要機器


私鉄


HS-257Ir形

端子電圧750V時、1時間定格出力160kW、定格回転数833rpm。

HS-277Ar形

端子電圧750V時、1時間定格出力200kW、定格回転数800rpm。

TDK-516-3E形

端子電圧750V時、1時間定格出力59.68kW、定格回転数918rpm。

TDK-522-A形

端子電圧750V時、1時間定格出力111.9kW、定格回転数723rpm。

K7-1503-C形

端子電圧750V時、1時間定格出力112kW、定格回転数567rpm。

K7-2003-A形

端子電圧750V時、1時間定格出力149kW、定格回転数769rpm。

MB-428-AVR形

端子電圧750V時、1時間定格出力425kW、定格電流615A、定格回転数850rpm。国鉄のMT52形と同等である。

以上は吊り掛け駆動方式。



脚注


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  1. ^ 久保敏、小山政明編『鉄道青春時代-国電(1)』(『鉄道ピクトリアル』2011年2月号別冊)電気車研究会、13頁。

  2. ^ abRP820 54-59頁。


  3. ^ 。「電車モーターを設計していたころ (PDF)」 、『わだち』第130号、鉄道友の会福井支部、2010年5月。



参考文献


  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2009年7月号 No.820(RP820 と略す。なお同誌はこれ以外も必要に応じ、注において略号RPと通巻、頁で指示する。)
    • 真鍋裕司「国鉄在来線電車用主電動機慨史」54-59頁。


関連項目




  • 抵抗制御

  • 総括制御

  • 電気車の速度制御




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