オフレコ



オフレコとは、談話などを公表しないこと、もしくは非公式なものとすることを指す報道用語。英語: off the record(記録にとどめないこと)に由来する。




目次





  • 1 成立条件


  • 2 種類


  • 3 取材源の秘匿


  • 4 欧米


  • 5 日本


  • 6 オフレコにおける肩書き


  • 7 話題になったオフレコ報道


  • 8 オフレコ解除の建前


  • 9 脚注


  • 10 参考文献


  • 11 関連項目




成立条件


発言者が先にオフレコであることを宣言し、それに対してその場にいた取材者全員が了承した場合のみ成立する。すなわち、「契約成立後の発言内容について、口頭約定のみによって完成する秘密保持契約を締結」したものである。広義では発言者と取材者以外に居合わせた第三の当事者たちにも適用される場合もある。



種類


オフレコの程度は、取材時に記者と発言者の間の約束として取り決められる。日本では名前と発言内容の両方の公表を拒否する完全オフレコと、名前だけを隠して、発言内容は公表出来る匿名報道がある[1]



取材源の秘匿


オフレコ発言は発言者の了解を得なければ、原則としてオフレコ解除をしてはならないとされる。


取材源の秘匿の観点から、しばしばジャーナリズムの義務かつ権利として主張される。たとえ法律違反を前提とする発言でも取材源の秘密は守られるべきであり、また公権力もこれを尊重すべきだという考え方は報道関係者を中心に根強い。


日本新聞協会編集委員会はオフレコについて「ニュースソース(取材源)側と取材記者側が相互に確認し、納得したうえで、外部に漏らさないことなど、一定の条件のもとに情報の提供を受ける取材方法で、取材源を相手の承諾なしに明らかにしない「取材源の秘匿」、取材上知り得た秘密を保持する「記者の証言拒絶権」と同次元のものであり、その約束には破られてはならない道義的責任がある。」と述べている[2]


しかし、実際にはオフレコ扱いであっても、何らかの形で報じられることもある。元共同通信の後藤謙次は、オフレコ発言であっても時期を置けば公表できるタイミングが、長年の取材により政治家との呼吸で分かるという[3]。元産経新聞記者の福島香織も、別に取材して同一情報が得られれば報道してもいいとの慣習や、完オフ情報がその直近に出された週刊誌に掲載されるなど、完全オフレコが守られないこともあるとしている[4]。その他にも、外部へ漏らさないとなっているオフレコ発言が、政治記者によって別の政治家に筒抜けになっているケースもあり[5]、ジャーナリストの岩上安身は、オフレコの記者メモが権力闘争の道具に使われたり、官邸に集められることで政治部の記者が諜報機関の役割になっていることを指摘する[6]



欧米



アメリカの大学ジャーナリズムスクールで使われるMelvin Mencher'sの「News Reporting and Writing」では、「バックグラウンド(背景説明)」、「ディープバックグラウンド(深層背景説明)」「オフレコ」の形態がある[7]。「バックグラウンド」は発言者の名前や肩書を明示できないが、発言内容は自由に使える匿名報道である[7]。「ディープバックグラウンド」は発言者の名前や肩書が明示できないだけでなく、発言内容の直接引用を行えないために記者が地の文で書くことになる[7]。「オフレコ」は聞いた話は一切公開してはならない「完全オフレコ」である[7]


欧米の報道では、オフレコは行われていないという意見がある。従来、日本ではアメリカに「国務省高官」といったオフレコの表現があると考えられてきた[8]。しかし、元新聞記者の福島香織によると、オフレコで得た情報が独自取材による情報と一致した場合に報道できなくなるため、欧米の記者はオフレコの要請を相手にしない[4]米CBSイブニングニュースのサブアンカーパーソンを務めていたコニー・チャンは、ニュート・ギングリッチ下院議長(当時)の母親にインタビューし、オフレコと言う約束を破って「ギングリッチ下院議長がヒラリー・クリントン大統領夫人(当時)を家ではビッチと呼んでいた」という発言を60 Minutesで放送して問題視された。チャンは直後にCBSを退職しているが、この放送との関連性は否定している。[要出典]


また政治分野での匿名報道(background briefing)も行われていないという意見がある。上杉隆は『ニューヨーク・タイムズ』での経験から、アメリカでは公人についてのオフレコ取材は認められていないという[9]。権力者から求められた場合でも、手ひどい意趣返しで対抗する。例えば1970年代に『ワシントン・ポスト』がキッシンジャー国務長官からベトナム戦争に関するリークを受けた。キッシンジャーは「政府高官」からの情報という匿名報道を求めた。これに対してワシントン・ポストは文章では一言も触れなかったが、キッシンジャーの写真を一緒に掲載した[10]



日本


日本では特に政治報道でオフレコが多用されている。記者クラブによって、オフレコ記者懇談会が半ば制度化している為である。
しかし、大臣のオフレコ発言がマスコミ各社でスクープされるようになり、大臣が辞任するケースが増えている。
このような、一方的なマスコミのリークは、日本社会に影響を及ぼし、「オフレコ」という言葉自体が死語になっている。



オフレコにおける肩書き


オフレコで報道される際の肩書は以下のような暗黙のルールがあると言われている[11][12]。匿名報道となっているが、肩書きの種類によっては取材源は事実上秘匿されていないものも多い。完全オフレコでない場合、本人は記事になる前提にして、公式に発言できない内容を(本人として)発言したいという思惑で答える場合もある[13]



  • 政府首脳 - 官房長官、(首相の可能性もある)[13]

  • 政府高官 - 官房副長官、(官房長官の可能性もある)[13]

  • 政府周辺 - 首相秘書官など[13]

  • 政府筋 - 官房副長官、首相秘書官

  • 党首脳 - 党首、党幹事長

  • 党幹部 - 党三役(党四役)

  • ○○周辺 - ○○の秘書

  • ○○省首脳 - 次官級

  • ○○省幹部 - 局長級、審議官

  • ○○省筋 - 中央省庁の実務者

  • ○○派領袖 - 派閥会長・派閥代表

  • ○○派幹部 - 派閥副会長・派閥事務総長


  • 権威筋 - その問題で決定権を持つ人


  • 消息筋、極めて信頼すべき筋 - その問題の決定権はないが、知識をもち解析ができる専門家

  • 企業首脳 - 法律上の代表権者である社長[13]

  • 企業幹部 - 取締役などの役員、社長だが特定を避け首脳と書けない場合[13]

特殊な場合で、海外駐在の特派員の記事の「観測筋」は、その特派員自身の場合がある。日本の新聞は客観報道を標榜しているためである[14]



話題になったオフレコ報道



  • 1994年 - 小沢一郎の過去のオフレコ発言(「海部俊樹は馬鹿」「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」)などを『文藝春秋』1994年10月号誌上で時事通信の田崎史郎が明かした。オフレコ発言の暴露は論議を呼び[15][16][17]、時事通信は田崎に減俸と出勤停止の処分を下した[18]


  • 1995年10月 - 防衛施設庁長官の宝珠山昇がオフレコで総理大臣の村山富市を「頭が悪い」と発言したことが明るみに出て、オフレコ解除が問題となる。宝珠山は長官職を更迭される[19]


  • 1995年11月 - 総務庁長官の江藤隆美がオフレコでの韓国併合をめぐる発言が非記者クラブのメディアで明らかになり、オフレコ解除をめぐって毎日新聞と読売新聞・産経新聞とで対応が分かれて対立した。江藤は長官を辞任した[20]


  • 2002年6月 - 内閣官房長官の福田康夫が非核三原則の見直しについてオフレコで発言し、問題視された[21]。福田は2003年7月にも強姦について「裸のような格好をする女性も悪い」とするオフレコ発言が報じられて、国会質問でも取り上げられた。しかし福田自身は答弁でこのオフレコ発言を否定した[22][23]


  • 2009年3月 - 内閣官房副長官の漆間巌が西松建設事件の検察捜査に関する見通しをオフレコ発言したことが問題視された。新聞報道等では、懇親会のオフレコ発言に関する扱いのルールに従い、「政府高官」として匿名で報じたが、政治問題化したことから河村建夫官房長官が実名を明かした[24][25]


  • 2011年7月 - 松本龍復興相が、当時の村井嘉浩宮城県知事との対談において、不適切と思われる発言をした後、記者らに向かって「今の最後の言葉はオフレコです。絶対書いたらその社は終わりだから」と発言した[26]。なお、松本のこのケースは冒頭で述べたオフレコの成立条件を満たさないため、オフレコには当たらない[27]。その後、同月5日に復興担当大臣を辞任した。


オフレコ解除の建前


実名が明かされてオフレコの建前が崩れた後になっても、オフレコ解除がされていない場合、不自然な状況が生まれたことがある。


内閣官房長官の福田康夫は解除前に、自分の発言について記者会見で質問を受け、「政府首脳に確認した」と一人二役を演じる羽目に陥った[21]。漆間巌の一件では、『日刊ゲンダイ』や鈴木宗男[28]から実名が漏れた。漆間巌はオフレコ解除を拒否したため、記者クラブに属するメディアは混乱した。



脚注




  1. ^ 2009年3月11日 読売新聞「政治の豆知識 オフレコ懇談とは」


  2. ^ オフレコ問題に関する日本新聞協会編集委員会の見解 1996(平成8)年2月14日


  3. ^ 「阿川佐和子のこの人に会いたい 後藤謙次」『週刊文春』2008年10月16日号、pp.141-142

  4. ^ ab福島香織 (2009年1月22日). “雑談②いつまでたっても慣れない総理番のお仕事”. Iza. 2010年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月20日閲覧。


  5. ^ 魚住昭『野中広務 差別と権力』講談社、2004年、pp.242.254


  6. ^ 2009年6月10日 1:29 AM 2009年6月10日 1:38 AM 2009年6月10日 1:46 AM 岩上安身twitter

  7. ^ abcdウォーターゲート事件のディープスロートさえ「オフレコ」取材ではなかった米国新聞の「ルール」 権力者に利用される日本の安易なオフレコ取材 牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」 2011年01月06日


  8. ^ 斎藤勉 「漆間発言」とメディア 取材源、安易に暴露していいのか 2009.3.11 12:09


  9. ^ 『ジャーナリズム崩壊』 P217


  10. ^ 上杉隆 (2009年3月12日). “漆間発言で思う、「オフレコ」を当然と思う日本メディアの甘さ”. DIAMOND online. 2010年4月18日閲覧。


  11. ^ 栗田亘 (2008年11月18日). “その記事の出どころは?”. 新s. 2010年4月20日閲覧。


  12. ^ 『新現場から見た新聞学』P96

  13. ^ abcdef「新聞の正しい読み方:情報のプロはこう読んでいる」 ISBN 4757103638


  14. ^ 「"筋"の話」『新聞をどう読むか』現代新書編集部編、講談社現代新書、1986年、pp.74-76.


  15. ^ 「小沢オフレコ暴露記者 タブー破りの真相」『週刊朝日』1994年9月30日号


  16. ^ ^櫻井よしこ「オピニオン縦横無尽 文春に"小沢一郎との訣別"を書いた田崎史郎氏の記者失格」『週刊ダイヤモンド』1994年9月24日号


  17. ^ 「ジャーナリストの現場から 記者クラブ制度の罪と罰 小沢一郎番記者『オフレコメモ』公開への是非」『週刊現代』1994年10月1日号。


  18. ^ ^田崎史郎『政治家失格 なぜ日本の政治はダメなのか』文春新書、2009年、pp.143-152


  19. ^ 柴田鉄治「戦後五〇年から二一世紀へ 新聞はいま」『21世紀のマスコミ 新聞 転機に立つ新聞ジャーナリズムのゆくえ』大月書店、1997年、p.87


  20. ^ 柴田(1997年)、pp.85-88.

  21. ^ ab『新 現場から見た新聞学』P97


  22. ^ 「太田誠一より悪質!福田官房長官『レイフ擁護』 オフレコ会見、女性記者猛反発『全録音』」『週刊文春』2003年7月10日号、pp.27-29.


  23. ^ 「福田官房長官」『レイプ擁護』発言 国会『偽証』の決定的証拠」『週刊文春』2003年7月17日号


  24. ^ 共同通信社 2009年3月7日
    民主、漆間副長官追及へ 「自民に波及せず」発言で(archive :2009-03-10)



  25. ^ 毎日新聞 2009年3月8日違法献金:「自民党に波及せず」発言は漆間官房副長官


  26. ^ 朝日新聞社2011年7月4日松本復興相、岩手・宮城両知事にきわどい発言連発


  27. ^ “大臣の「これはオフレコ」に反論せず 「記者たちはなめられている」”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2011年7月7日). http://www.j-cast.com/2011/07/06100713.html?p=all 2011年7月7日閲覧。 


  28. ^ ムネオ日記 2009年3月 2009年3月6日(金)を参照



参考文献


  • 天野勝文、橋場義之『新 現場から見た新聞学』2008年 ISBN 978-4762018770

『現場から見た新聞学 ―取材・報道を中心に―』の続編。


  • 上杉隆『記者クラブ崩壊』2010年 ISBN 978-4098250769


関連項目


  • 匿名

  • 実名報道

  • チャタムハウスルール


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