カロネード砲
カロネード砲(カロネードほう、英語: Carronade)は、大砲の一種。イギリス陸軍のロバート・メルビル中将の発案で、スコットランドのカロン社で作られた近距離用の前装式滑腔砲。1776年に開発、1779年からイギリス海軍に正式採用され、1860年代頃まで使われた。
目次
1 特徴
2 歴史
3 脚注
3.1 注釈
3.2 出典
4 参考文献
5 関連項目
特徴
カロネード砲の特徴は砲身の短さと肉薄さにあり、例えば同じ32ポンド砲と比較すると半カノン砲が自重2.5tに対して、カロネード砲は0.8t。砲身長3mに対して1.2mと半分以下である[1]。また砲は初期を除いて従来の砲車ではなく、発射時に反動吸収装置として働くスライド式の固定砲架上(前部を軸に左右への指向は可能)に載せられており、これによって一門あたりの砲員が少なく済む利点を生み出したため、戦列艦の補助火砲として、また通常は搭載不可能な大口径砲を4等級以下の重フリゲートに積載することが可能になった。
カロネード砲のもうひとつの特徴は、重さの割に口径が大きめに作られていたことである。設計段階から重火力が求められていたことで、そのサイズから滅多に艦砲にならない68ポンドの重砲弾が撃てるものまでが作られた。その威力はすさまじく「粉砕者」(Smasher)のあだ名が付けられた。また短砲身・大口径であることから砲腔を精確に鋳造加工しやすく、射撃精度はより長砲身のカルバリン砲やカノン砲に劣るものではなかった。
ただし、代償として射程が犠牲になっており、カノンロイヤル級の68ポンド砲で比較すると通常砲の有効射程が約1600mに対し、カロネード砲は約360mでしかない[注釈 1]。あくまで接舷戦直前で威力を発揮する近距離専門砲であるため、旋回砲同様の補助火砲扱いをされ、帆走軍艦の等級分けの基準となる備砲数には長い間含まれず、ようやくカロネード砲が備砲だと認められたのは1817年からだった(だが、帆船時代の砲撃戦はその威力と命中精度から、大抵は距離数百m以下の接近戦のため、射程の短さによって不利になる場面は少なかった)。
歴史
カロネードは導入当初はその圧倒的な火力が魅力となり、イギリス海軍に積極的に配備されていった。間もなく世界各国の海軍に広まり、独立戦争ではアメリカ海軍にも採用された。その最盛期はナポレオン戦争頃で、英仏両海軍の戦列艦に装備されていた。
しかし、19世紀中頃には命中精度や射程に優れ、発射速度の速い後装式施条砲の登場によって、カロネード砲は登場一世紀にも満たない内に過去の物となった。
脚注
注釈
^ 12ポンドカロネード砲は約180m[2]。
出典
^ 田中航 1979, p. 78.
^ 田中航 1979, p. 79.
参考文献
田中航 『戦艦の世紀』 毎日新聞社、1979年。全国書誌番号:79014362。
関連項目
- カルバリン砲
- セーカー砲
- カノン砲
- 旋回砲
グラットン - カロネード砲のみを搭載した4等艦。