コンバート (野球)


コンバートとは、スポーツにおいて、選手の守備位置(ポジション)を転向させることを言う。コンバートのもともとの意味は「(宗教の)改宗」である。




目次





  • 1 概要


  • 2 コンバートの実例

    • 2.1 内野におけるコンバート


    • 2.2 投手→野手


    • 2.3 捕手→内野手


    • 2.4 捕手→外野手


    • 2.5 内野手→外野手(おもに中堅手・右翼手)


    • 2.6 内野手→外野手(おもに左翼手)


    • 2.7 外野手→内野手


    • 2.8 投手・捕手へのコンバート



  • 3 メジャーリーグにおけるコンバート


  • 4 その他


  • 5 脚注


  • 6 関連項目




概要


野球では、チーム事情、選手の守備力などの関係で、ポジションがコンバートされることがある。プロ野球では、キャンプから練習を始める選手がほとんどである。



コンバートの実例





内野におけるコンバート


プロ野球では、一定以上の期間、内野の要である遊撃手あるいは二塁手としてプレーしてきた選手が、自身の衰え、または守備力の高い選手の新加入によって、守備範囲が狭くてすむ三塁手または一塁手にコンバートされるケースがある。また、三塁手から一塁手にコンバートされるケースもある。


代表的な例としては、落合博満(ロッテ→中日→巨人→日本ハム、二塁手→三塁手→一塁手)、藤田平(阪神、遊撃手→一塁手)、野村謙二郎(広島、遊撃手→三塁手→一塁手)、田中幸雄(日本ハム、遊撃手→三塁手→一塁手)、宮本慎也(ヤクルト、遊撃手→三塁手)、小久保裕紀(ダイエー→巨人→ソフトバンク、二塁手→三塁手→一塁手)、井口資仁(ダイエー→MLB→ロッテ、遊撃手→二塁手→一塁手)などが挙げられる。
現役選手としては、鳥谷敬(阪神、遊撃手→三塁手→二塁手)、浅村栄斗(西武、遊撃手→一塁手→二塁手)、鈴木大地(ロッテ、遊撃手→二塁手→三塁手)などが挙げられる。


ただし、遊撃と二塁や、遊撃と三塁や、三塁と一塁などといった、複数のポジションを守れる内野手は珍しくないため、コンバートとは言わないが守備位置を変えて出場する(例えば、本来三塁手の選手が一塁手として試合に出場する)ケースは非常によく見られる。



投手→野手


日本の高校野球などアマチュア野球では、ポジションの適性を重視するよりも最も運動能力が優れているという理由で投手を決めることが多いため(いわゆる「エースで4番」)、投手として入団し、間もなく野手にコンバートされる選手も多い。その例としては川上哲治、王貞治らが代表的である。アメリカや中南米では遊撃手が一番重要なポシジョンと見られているため、同じ理由で遊撃手として入団した後コンバートされる例が多い。


プロ入りから一定期間経ってから投手から野手へコンバートされた選手としては、元広島の石井琢朗(投手→三塁手→遊撃手)、元西武の嶋重宣(投手→一塁手→外野手)、元ヤクルトの宮出隆自(投手→外野手)、ヤクルトの雄平(投手→外野手)、阪神の糸井嘉男(投手→外野手)などがいる。


投手と野手の両方で実績を残した選手としては、元阪急の野口二郎(830安打・237勝)、元中日の西沢道夫(1717安打・60勝)、元近鉄の関根潤三(1137本安打・65勝)などがいる。



捕手→内野手


捕手というポジションは特殊な技術が要求されるため、打力は高いが、リードに難のある選手や、肩に不安を抱える若手選手が出場機会を増やす目的でコンバートされるケースがある。また、長年正捕手として活躍してきた選手が、守備の負担を軽減する目的で内野手(主に一塁手)にコンバートされるケースもある。


一塁手へのコンバートは捕手から内野手へのコンバートの中で最も多いコンバートである。


代表的な例は、元西武の田淵幸一(捕手→一塁手)、高木大成(捕手→一塁手・外野手)、貝塚政秀(捕手→一塁手・外野手)、元広島の衣笠祥雄(捕手→一塁手→三塁手)、江藤智(捕手→三塁手→一塁手)、木村拓也(捕手→二塁手・遊撃手・外野手)、元日本ハムの小笠原道大(捕手→一塁手→三塁手→一塁手)、高橋信二(捕手→一塁手)、元ダイエーの吉永幸一郎(捕手→一塁手)、元オリックスの北川博敏(捕手→一塁手)、元中日の山崎武司(捕手→外野手→一塁手)、元ヤクルトの岩村明憲(捕手→三塁手)など。
現役選手では楽天の銀次(捕手→二塁手→三塁手・一塁手)、阪神の今成亮太(捕手→外野手→三塁手)、原口文仁(捕手→一塁手)、巨人の阿部慎之助(捕手→一塁手)、中日の福田永将(捕手→一塁手・三塁手)などの例がある。



捕手→外野手


内野手へのコンバート同様、打力が評価されてのコンバートである。俊敏な選手は走力を生かすため一塁手や三塁手ではなく外野にコンバートする傾向にある。


代表的な例は、元東映の白仁天、元オリックスの石嶺和彦、元ヤクルトの飯田哲也(捕手→二塁手→外野手)、秦真司、元大洋の屋鋪要、元阪神の浅井良、狩野恵輔、元西武の垣内哲也、元中日の関川浩一、和田一浩、元日本ハムの米野智人、元楽天の礒部公一など。
現役選手では阪神の中谷将大、楽天の岡島豪郎、日本ハムの近藤健介(捕手→三塁手→捕手→外野手)などの例がある。



内野手→外野手(おもに中堅手・右翼手)


守備に難があるが身体能力に優れた内野手は、その強肩・俊足を生かすために外野手にコンバートされる場合がある。


秋山幸二はプロ入り後、投手から三塁手にコンバートされたが、スローイングに難があり、当時の森祇晶監督から「これからは外野を走り回る選手が華となる時代だから、外野に行け」と言われ、センターにコンバートされたことで守備の才能が一気に開花した。同じように田口壮(カージナルス)、福留孝介(カブス)は内野手として入団したが、守備で難がある部分が多く外野コンバート、その後外野守備の名手に成長している。松井秀喜(ヤンキース)はプロ入り前は三塁手であったが、プロ入り後は外野手にコンバートされている。


新庄剛志(元阪神・日本ハム)は外野手として入団したが1年目に立浪和義の守備から刺激を受け、志願して遊撃手へ転向し一軍で使われ始めた[1]。他に三塁手・二塁手としての一軍出場経験があり、オールスターゲームに三塁手で出場したこともある。しかしやはりその俊足と強肩は外野手にしないともったいないということで中堅手にコンバートされ、その後外野手として華々しい活躍を収めた。(なお、コンバート以後も時々内野手として出場している)


他には、元南海の広瀬叔功(遊撃手→中堅手)、元阪神の真弓明信(遊撃手→二塁手→外野手)、元ロッテの西村徳文(二塁手→三塁手→外野手)、サブロー(遊撃手→外野手)、元横浜の波留敏夫(遊撃手→外野手)、金城龍彦、(三塁手→外野手)、元巨人の鈴木尚広(遊撃手→二塁手→外野手)、堂上剛裕(一塁手→外野手)、元ヤクルトの福地寿樹(二塁手→外野手)、元日本ハムの赤田将吾(二塁手→外野手)、元楽天の森山周(遊撃手・二塁手→外野手)、元オリックスの鉄平(遊撃手→外野手)など。
現役選手では、DeNAの梶谷隆幸(遊撃手→外野手)、桑原将志(二塁手→外野手)、日本ハムの西川遥輝(二塁手→外野手)、大田泰示(三塁手・一塁手→外野手)、ソフトバンクの吉村裕基(三塁手→一塁手→外野手)、福田秀平(遊撃手→外野手)、巨人の立岡宗一郎(三塁手→外野手)、陽岱鋼(遊撃手・三塁手→外野手)、広島の鈴木誠也(遊撃手→外野手)などの例がある。



内野手→外野手(おもに左翼手)


左翼手は他の外野と違い、守備範囲が狭い上に強肩も中堅手、右翼手に比べると必要とされず、比較的守りやすいポジションである。そのため他からのコンバートが多く、「最もハードルが低いポジション」とも言われる。中には内野手としての適性を見切られた選手や、一塁手や指名打者に起用したい選手が複数いる場合などに仕方なく左翼を守らせたり、打撃が好調なのに内野にポジションが無いため、いわば「後ろ向きのコンバート」もある。また、現役晩年に内野手では守備範囲が狭くなり、左翼にコンバートされるケースも多い。


代表的な例は、元中日の大島康徳(三塁手→左翼手→一塁手)、元日本ハムの田中幸雄(遊撃手→左翼手→遊撃手→一塁手)、元横浜の古木克明(三塁手→左翼手)、元楽天の草野大輔(三塁手→左翼手)、元ソフトバンクの松中信彦(一塁手→左翼手)、元西武の松井稼頭央(遊撃手→左翼手→右翼手・中堅手)など。
現役選手では、ソフトバンクの内川聖一(二塁手→一塁手→左翼手・一塁手)、日本ハムの中田翔(三塁手→一塁手→左翼手→一塁手)、ヤクルトの畠山和洋(一塁手→左翼手→一塁手)、楽天の枡田慎太郎(遊撃手→三塁手→左翼手)、DeNAの筒香嘉智(三塁手→左翼手)、中井大介(二塁手→左翼手)、中日の遠藤一星(遊撃手→左翼手・右翼手)などがある。
また、現役晩年に左翼を守ったケースとして、有藤道世(三塁手→左翼手)、高橋慶彦(遊撃手→左翼手)、原辰徳(二塁手→三塁手→左翼手→一塁手→三塁手)などがある。



外野手→内野手


プロ野球では、肩や守備力の衰えた外野手が打撃力を活かす目的で一塁手へコンバートされる事がよくある。主な例としては山﨑武司(中日→オリックス→楽天→中日)や、稲葉篤紀(ヤクルト→日本ハム)などが挙げられる(ただし、その場合は過去に豊富な打撃成績を残していることが求められるケースが多い)。


また、プロ野球では比較的少ないが、外野手から一塁手以外の内野のコンバートで成功したケースとしては、日本ハムからトレードで移籍してきた張本勲に左翼手のレギュラーポジションを奪われる形で三塁手へ転向した高田繁(巨人)が挙げられる。



投手・捕手へのコンバート


日本球界では、プロ入り後、他のポジションから投手や捕手にコンバートされる例は極めて珍しい。


ここに挙げた5人はいずれもプロ入り前のコンバートであるが、プロ入り後のコンバートは、以下の選手が挙げられる程度である。



  • 萩原淳(内野手→投手、高校以降転向まで投手経験なし


  • 上原厚治郎(投手→捕手→投手) - 捕手へのコンバートを巡ってヤクルトを退団し西武へ移籍した経緯がある


  • 遠山奬志(投手→外野手→投手)


  • 嘉勢敏弘(外野手→投手、ただし高校時代は投手)


  • 今村文昭(内野手→投手、ただし高校時代は投手兼任)


  • 藤井宏海(内野手→投手、ただし高校時代は投手)


  • 織田淳哉(投手→捕手→投手)


  • 筧裕次郎(捕手→内野手→捕手)


  • 内之倉隆志(内野手→捕手)


  • 斉藤巧(内野手→捕手)


  • 沖泰司(内野手→捕手)


  • 笹川隆(内野手→捕手)


  • 尾崎匡哉(内野手→捕手)

例外に、元広島のフェリックス・ペルドモが内野手から投手へ転向(と言うより二刀流)した例がある。新庄剛志は、阪神時代に投手としてオープン戦に出場した事がある。


コンバートとは違うが池辺巌(元阪神)[2]、五十嵐章人(元ロッテ)、金村義明(元近鉄)、井生崇光(元広島)などは捕手を全部使い切ったときに急造捕手として出場したことがあった。



メジャーリーグにおけるコンバート


マイナーリーグでは選手の適性を見極めて育成が行われるためコンバートが頻繁に行われる。


アメリカや中南米のアマチュア野球では最も身体能力の優れた選手は投手ではなく遊撃手になる。
そのため、日本とは違い投手から野手へのコンバートは意外に少なく、遊撃手から投手を含めた他のポジションにコンバートされることのほうが多い。そのため、遊撃手から投手へコンバートされた選手も少なくない(トレバー・ホフマン、ジョー・ネイサンなど)。


また、肩の強さを生かすために捕手から投手へと転向する選手もいる(トロイ・パーシバル、ジェイソン・モット、ケンリー・ジャンセンなど)。


ナックルボーラーとして有名なボストン・レッドソックスのティム・ウェイクフィールドもピッツバーグ・パイレーツ時代にナックルボールを習得し、内野手から投手に転向している。


外野手から投手への転向は、最多セーブを獲得したラファエル・ソリアーノなどがいる。



その他


  • コンバートせずにいろいろなポジションをこなすことが出来る選手をユーティリティープレイヤーと呼ぶ。内野全てを守れる選手、内野と外野を共通して守れる選手、さらに捕手まで守れる選手などさまざまである。
過去の例としては木村拓也(日本ハム→広島→巨人、投手以外の全て)、後藤孝志(巨人、三塁手、一塁手、外野手)、元木大介(巨人、内野の全て)、万永貴司(横浜、内野の全て)、秀太(阪神、内野の全て)、飯山裕志(日本ハム、内野の全て)などが挙げられる。
現役選手では巨人の寺内崇幸(内野の全て)、阪神の今成亮太(三塁手、一塁手での出場が多いが、左翼手、右翼手、捕手、二塁手にも対応可能)、DeNAの大和(内野の全て及び外野)、ソフトバンクの明石健志(内野の全て及び外野)、川島慶三(内野の全て及び外野)、中村晃(左翼手、右翼手、一塁手)、日本ハムの杉谷拳士(内野の全て及び外野)、近藤健介(捕手、三塁手、遊撃手及び外野)、西武の外崎修汰(内野の全て及び外野)、オリックスの大城滉二(一塁手を除く内野の全て、及び外野)、ロッテの中村奨吾(内野の全て及び外野)、東北楽天の渡辺直人(内野の全て)などがこれに該当する。

ここに挙げた選手のほとんどは、守備固めで出場することが多いが(中村晃、中村奨吾などのように、複数のポジションで併用されながらレギュラーとして起用される選手も存在する)、主力選手の不調や故障などの非常時のバックアップ要員としてスタメンとしての起用にも対応できることが少なくないため、比較的重宝される傾向にある。

日本プロ野球では、これまでに高橋博士、五十嵐章人の2名が投手を含めた9ポジションでの出場を達成している。


昔のプロ野球では投手と野手を兼任する選手も少なくなかった。投手でノーヒットノーラン、野手で首位打者を達成した呉昌征、投手と外野手の両方でオールスターゲーム・ファン投票選出された関根潤三、規定投球回到達した投手が後年外野手に転向し規定打席到達した畠山準などの例がある。現在では大谷翔平が投手と野手を兼任している(ただし、登録は投手である)。


メジャーリーグではユーティリティープレーヤーでありながら試合毎に守備位置を変えながらレギュラーとして活躍する選手が少なくない(代表的な事例ではショーン・フィギンズ、ライアン・フリール、ビル・ホール、現役選手ではベン・ゾブリスト、ダニー・バレンシア、エドゥアルド・ヌニェス、クリス・テイラー、マーウィン・ゴンザレス、ダニエル・デスカルソなど)。日本プロ野球に比べて、移籍やマイナーリーグへの降格、レギュラー選手の休養などでチームのメンバーが大きく代わってしまうことが多いこと、あるいは打者よりもリリーフ投手にベンチ入りの枠を多く割り当てることが少なくないメジャーリーグにおいては、日本以上に重宝される傾向が強い。



脚注




  1. ^ 【5月26日】1992年(平4) 予告していた!新庄剛志 92年初打席は初球プロ初本塁打Sponichi Annex、2015年11月8日閲覧。


  2. ^ 内田雅也 (2012年3月27日). “猛虎人国記(14)~長崎県~ 初体験の捕手でピンチ救った”. スポーツニッポン. http://www.sponichi.co.jp/baseball/yomimono/mouko/kiji/K20120327002919050.html 2013年5月3日閲覧。 



関連項目


  • ユーティリティープレイヤー

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