漢書
































天一閣に保管されている、明の時代の版である漢書




漢書(宋刻本)


漢書』(かんじょ)は、中国後漢の章帝の時に班固、班昭らによって編纂された前漢のことを記した歴史書。二十四史の一つ。「本紀」12巻、「列伝」70巻、「表」8巻、「志」10巻の計100巻から成る紀伝体で、前漢の成立から王莽政権までについて書かれた。後漢書との対比から前漢書ともいう。


『史記』が通史であるのに対して、漢書は初めて断代史(一つの王朝に区切っての歴史書)の形式をとった歴史書である。『漢書』の形式は、後の正史編纂の規範となった。


『史記』と並び、二十四史の中の双璧と称えられ、故に元号の出典に多く使われた。『史記』と重なる時期の記述が多いので、比較される事が多い。特徴として、あくまで歴史の記録に重点が多いので、『史記』に比べて物語の記述としては面白みに欠けるが、詔や上奏文をそのまま引用しているため、正確さでは『史記』に勝る。また思想的に、儒教的な観点により統一されている。




目次





  • 1 成書過程


  • 2 史記との体裁の違い


  • 3 内容

    • 3.1 本紀


    • 3.2


    • 3.3


    • 3.4 列伝



  • 4 注釈


  • 5 日本語訳文献


  • 6 関連文献


  • 7 関連項目




成書過程


『漢書』の制作は、班彪(はんぴょう)が司馬遷の『史記』を継いで書いた『後伝』に始まる。班彪の子、班固が『史記』と未完の『後伝』を整理補充して『漢書』を制作した。ただし、その八表と天文志は未完であり、和帝の時、妹の班昭と馬続によって完成された。



史記との体裁の違い


  • 分野史:「書」を「志」と改める。

  • 伝記:「世家」を廃して「列伝」に入れた。

  • 年表:「百官公卿表」を創設し、官制の沿革を示した。「古今人表」を著し、太古から漢以前の人物を評価した。


内容



本紀


  1. 高帝紀 - 高祖劉邦

  2. 恵帝紀 - 恵帝劉盈

  3. 高后紀 - 高后呂雉(少帝(某)・少帝劉弘)

  4. 文帝紀 - 文帝劉恒

  5. 景帝紀 - 景帝劉啓

  6. 武帝紀 - 武帝劉徹

  7. 昭帝紀 - 昭帝劉弗陵

  8. 宣帝紀 - 宣帝劉詢

  9. 元帝紀 - 元帝劉奭

  10. 成帝紀 - 成帝劉驁

  11. 哀帝紀 - 哀帝劉欣

  12. 平帝紀 - 平帝劉衎




  1. 異姓諸侯王表 - 劉氏以外の王

  2. 諸侯王表

  3. 王子侯表

  4. 高恵高后文功臣表

  5. 景武昭宣元成功臣表

  6. 外戚恩沢侯表

  7. 百官公卿表

  8. 古今人表




  1. 律暦志 - 鄧平らの太初暦・劉歆の三統暦

  2. 礼楽志

  3. 刑法志

  4. 食貨志

  5. 郊祀志

  6. 天文志

  7. 五行志

  8. 地理志

  9. 溝洫志


  10. 芸文志 - 劉向の『別録』、劉歆の『七略』に基づく。


列伝


  1. 陳勝項籍伝 - 陳勝・項籍

  2. 張耳陳余伝 - 張耳・陳余

  3. 魏豹田儋韓王信伝 - 魏豹・田儋・韓王信

  4. 韓彭英盧呉伝 - 韓信・彭越・英布・盧綰・呉芮

  5. 荊燕呉伝 - 荊王劉賈・燕王劉沢・呉王劉濞

  6. 楚元王伝 - 楚元王劉交・劉向・劉歆

  7. 季布欒布田叔伝 - 季布・欒布・田叔

  8. 高五王伝 - 劉肥・劉如意・劉友・劉恢・劉建

  9. 蕭何曹参伝 - 蕭何・曹参

  10. 張陳王周伝 - 張良・陳平・王陵・周勃

  11. 樊酈滕灌傅靳周伝 - 樊噲・酈商・夏侯嬰・灌嬰・傅寬・靳歙・周緤

  12. 張周趙任申屠伝 - 張蒼・周昌・趙堯・任敖・申屠嘉

  13. 酈陸朱劉叔孫伝 - 酈食其・陸賈・朱建・劉敬・叔孫通

  14. 淮南衡山済北王伝 - 淮南厲王劉長・衡山王劉賜・済北貞王劉勃

  15. 蒯伍江息夫伝 - 蒯通・伍被・江充・息夫躬

  16. 万石直周張伝 - 石奮・衛綰・直不疑・周仁・張欧

  17. 文三王伝 - 梁孝王劉武・代孝王劉参・梁懐王劉揖

  18. 賈誼伝 - 賈誼

  19. 爰盎鼂錯伝 - 袁盎・鼂錯

  20. 張馮汲鄭伝 - 張釈之・馮唐・汲黯・鄭当時

  21. 賈鄒枚路伝 - 賈山・鄒陽・枚乗・路温舒

  22. 竇田灌韓伝 - 竇嬰・田蚡・灌夫・韓安国

  23. 景十三王伝

  24. 李広蘇建伝 - 李広・蘇建

  25. 衛青霍去病伝 - 衛青・霍去病

  26. 董仲舒伝 - 董仲舒

  27. 司馬相如伝 - 司馬相如

  28. 公孫弘卜式児寛伝 - 公孫弘・卜式・児寛

  29. 張湯伝 - 張湯

  30. 杜周伝 - 杜周

  31. 張騫李広利伝 - 張騫・李広利

  32. 司馬遷伝 - 司馬遷

  33. 武五子伝 - 戻太子劉拠

  34. 厳朱吾丘主父徐厳終王賈伝 厳助・朱買臣・吾丘寿王・主父偃・徐楽・厳安・終軍・王褒・賈捐之

  35. 東方朔伝 - 東方朔

  36. 公孫劉田王楊蔡陳鄭伝 - 公孫賀・劉屈氂・田千秋・王訢・楊敞・蔡義・陳万年・鄭弘

  37. 楊胡朱梅伝 - 楊王孫・胡建・朱雲・梅福

  38. 霍光金日磾伝 - 霍光・金日磾

  39. 趙充国辛慶忌伝 - 趙充国・辛慶忌

  40. 傅常鄭甘陳段伝 - 傅介子・常恵・鄭吉・甘延寿・陳湯・段会宗

  41. 雋疏于薛平彭伝 - 雋不疑・疏広・于定国・薛広徳・平当・彭宣

  42. 王貢両龔鮑伝 - 王吉・貢禹・龔勝・龔舎・鮑宣

  43. 韋賢伝 - 韋賢

  44. 魏相丙吉伝 - 魏相・丙吉

  45. 眭両夏侯京翼李伝 - 眭弘・夏侯始昌・夏侯勝・京房・翼奉・李尋

  46. 趙尹韓張両王伝 - 趙広漢・尹翁帰・韓延寿・張敞・王尊・王章

  47. 蓋諸葛劉鄭孫毋将何伝 - 蓋寛饒・諸葛豊・劉輔・鄭崇・孫宝・毋将隆・何並

  48. 蕭望之伝 - 蕭望之

  49. 馮奉世伝 - 馮奉世

  50. 宣元六王伝

  51. 匡張孔馬伝 - 匡衡・張禹・孔光・馬宮

  52. 王商史丹傅喜伝 - 王商・史丹・傅喜

  53. 薛宣朱博伝 - 薛宣・朱博

  54. 翟方進伝 - 翟方進

  55. 谷永杜鄴伝 - 谷永・杜鄴

  56. 何武王嘉師丹伝 - 何武・王嘉・師丹

  57. 揚雄伝 - 揚雄

  58. 儒林伝

  59. 循吏伝

  60. 酷吏伝

  61. 貨殖伝

  62. 游侠伝

  63. 佞幸伝

  64. 匈奴伝 - 匈奴

  65. 西南夷両粤朝鮮伝 - 南越・衛氏朝鮮

  66. 西域伝 - 西域

  67. 外戚伝 - 外戚

  68. 元后伝 - 王政君

  69. 王莽伝 - 王莽

  70. 叙伝 - 班家の歴史・班固の序文


注釈


  • 現在通行している『漢書』には、唐の顔師古注が付されている。


  • 清の王先謙『漢書補注』


  • 楊樹達『漢書窺管』世界書局、1963年


  • 長澤規矩也 『和刻本正史 漢書』 <全2巻>汲古書院 1983年、


影印本で1巻は「帝紀・表・志・列伝上」、2巻は「列伝下」


日本語訳文献


「志」

  • 加藤繁訳註 『史記平準書・漢書食貨志』 岩波文庫、1942年、復刊1977年、1996年 ISBN 4003341511


  • 内田智雄訳注 『漢書刑法志』 ハーバード燕京同志社東方文化講座委員会、1958年
    • 『譯注 中国歴代刑法志』 創文社、1964年。冨谷至補注(改訂版)、2005年

  • 『中国の科学 続世界の名著1』 薮内清責任編集、中央公論社(新装版中公バックス)
    「漢書律暦志」を収録、pp.167~223、注解pp.441~460


  • 黒羽英男訳注 『漢書食貨志訳注』 明治書院、1980年。原文・書下し・詳細な訳注・解説を収録


  • 鈴木由次郎訳注 『漢書藝文志』 明徳出版社〈中国古典新書〉、1968年、新版1988年ほか ISBN 4896192176


  • 冨谷至・吉川忠夫訳注 『漢書五行志』 平凡社東洋文庫、1986年 ISBN 4582804608


  • 狩野直禎・西脇常記訳注 『漢書郊祀志』 平凡社東洋文庫、1987年 ISBN 4582804748


  • 永田英正・梅原郁訳注 『漢書食貨・地理・溝洫志』 平凡社東洋文庫、1988年 ISBN 4582804888、各・ワイド版刊、2007~2008年

「列伝」

  • 本田済編訳 『漢書 後漢書 三国志列伝選』 〈中国古典文学大系13〉平凡社、1968年、復刊1994年。普及版「中国の古典シリーズ」 1973年


  • 井上秀雄ほか訳注 『東アジア民族史1 正史東夷伝』 平凡社東洋文庫、1976年


  • 内田吟風・田村実造ほか訳注 『騎馬民族史1 正史北狄伝』 平凡社東洋文庫、1978年。「漢書匈奴伝」を収録


  • 三木克己編訳 『漢書列伝選』 筑摩書房〈筑摩叢書〉、1992年。元版は〈世界文学全集 4 史記・漢書〉同、1970年


  • 福島吉彦編 『中国詩文選8 漢書』 筑摩書房、1976年。※以下4冊は原文、書下し、訳・解説の構成。


  • 髙木友之助・片山兵衛訳注 『漢書列伝』 明徳出版社〈中国古典新書 続編〉、1991年

  • 福島正編訳 『史記・漢書 鑑賞中国の古典7』 角川書店、1989年。「王莽伝」を収録


  • 福井重雅編 『中国古代の歴史家たち 司馬遷・班固・范曄・陳寿の列伝訳注』 早稲田大学出版部、2006年

「全訳」(現代語訳注のみ)

  • 小竹武夫訳 『漢書』 筑摩書房(上・中・下)、1977年~1978年。読売文学賞(第31回、研究部門)受賞

  • 改訂版 ちくま学芸文庫(全8巻)、1997年~1998年、復刊2010年、2016年
    • 『漢書1 帝紀』 ISBN 4480084010

    • 『漢書2 表・志(上)』 ISBN 4480084029

    • 『漢書3 志(下)』 ISBN 4480084037

    • 『漢書4 列伝I』 ISBN 4480084045

    • 『漢書5 列伝II』 ISBN 4480084053

    • 『漢書6 列伝III』 ISBN 4480084061

    • 『漢書7 列伝IV』 ISBN 448008407X

    • 『漢書8 列伝V』 ISBN 4480084088



関連文献



  • 大木康 『「史記」と「漢書」 中国文化のバロメーター』
<書物誕生:あたらしい古典入門> 岩波書店 2008年、ISBN 4000282832

  • 増井経夫 『中国の歴史書 中国史学史』 <刀水歴史全書20>刀水書房 1984年


  • 竹内康浩 「「正史」はいかに書かれてきたか 中国の歴史書を読み解く」

<あじあブックス>大修館書店、2002年、ISBN 4469231835

  • 稲葉一郎 『中国史学史の研究』 <東洋史研究叢刊70> 京都大学学術出版会、2006年

  • 稲葉一郎 『中国の歴史思想 紀伝体考』<中国学芸叢書7> 創文社 1999年


  • 狩野直喜 『両漢学術考』 筑摩書房 1964年、復刊1978年


関連項目




  • 倭・倭人関連の中国文献

  • 史漢






Popular posts from this blog

Top Tejano songwriter Luis Silva dead of heart attack at 64

政党

天津地下鉄3号線