治山ダム
治山ダム(ちさんダム)とは、森林法(治山事業)に基づき設置されるダム様構造物のこと。過剰な土砂流出により荒廃した渓流、地すべりをはじめとした斜面崩壊箇所下流に設置される。
目次
1 概要
2 構造
3 治山ダムの効果
4 砂防ダムとの違い
5 歴史
6 関連項目
7 出典
8 外部リンク
概要
谷止工、床固工とも呼ばれるものの総称[1]。山腹や河川の縦・横侵食を軽減し、河川や渓流に面する森林(保安林)の維持・造成を行うために設置される。ダムの設置により山脚(斜面崩壊地末端部)や乱れがちな流路が固定され、上流側に渓畔林や緑地が造成されていく。渓流部の勾配が緩くなることで、洪水時などに発生する土砂の急激な移動を一時的に捕捉し、通常の流量時に徐々に下流に流下させることで、上流部で発生する土砂を安全にかつ平準的に流下させる機能がある。単独で効果が発現できない場合には、複数基を階段状に設置する[2]。
ダムの後背部は完成後比較的短い期間で満砂に近い状態になることが多いため、貯水機能は少ない。
構造
重力式コンクリートダムに似る。主に山脚の固定を目的に設置されることから、基本的にダムの背面は土砂で埋め戻される、または早期に上流からの土砂で満たされる。このため、設計時の安定計算ではダムの背面に掛かる水圧は考慮しない、もしくは満水時の数分の一で計算される場合がほとんどである。
治山ダムの効果
渓流に部分的な緩斜面を造成することにより流速を落ち着かせ、流向をコントロールする。このため、必ずしもダムの背面が空っぽである必要はなく、完成時点でほぼ満砂状態となっていることが普通である。主な効果は次の通り。
- 渓流内の勾配を緩和:侵食傾向の激しい渓流に設置することにより、ダム背部の渓流勾配を緩和し、水平方向の渓岸侵食、鉛直方向の渓床侵食を防止する。
- 崩壊地の拡大防止:崩壊地の直下流に設置することにより、崩壊地の拡大を防止する。
- 不安定土砂の固定:過去の土石流などで堆積した土塊の下流部に設置することにより、再移動(再土石流化)を防止する。
- 土石流による荒廃防止:土石流の流下による渓岸侵食の防止、土石流の流速緩和ひいては抑止する。
- 流木対策:流木被害を防止するため、スリットダム化した治山ダムも存在する。
砂防ダムとの違い
砂防ダムと類似の構造であるが、目的が異なるため、概ね堤高が低く厚みも薄い(概ね砂防ダムの厚みは3m以上、治山ダムの厚みは2m以下)。
歴史
日本では、過度な森林伐採に伴い出現したハゲ山、激しい気象条件下に伴い荒廃した山地などを復旧するため、古くから植栽工事が、またその植栽の足がかりとなる砂止めといった治山ダムの原型が作られて生きた。明治時代に入るとお雇い外国人による近代土木技術の移入が進み、ヨハニス・デ・レーケやアメリゴ・ホフマンらにより、技術体系の基礎が作られた。
関連項目
- 森林
- 公共事業
出典
^ [森林土木技術者のための環境保全用語辞典p154(財団法人林業土木コンサルタンツ)]
^ 低ダム群工法(林野庁ホームページ)
- 治山技術基準-総則・山地治山編-(日本治山治水協会)
外部リンク
- 治山事業の歴史(愛知県農林水産部農林基盤担当局森林保全課ホームページ)