陸上競技場
陸上競技場(りくじょうきょうぎじょう)とは、陸上競技を行うために設けられる施設である。通常は屋外に常設されるものを指すが、体育館やホール内に特設される室内陸上競技場もある。
日本の主要な陸上競技場は地方自治体が設立・運営しているものが多いが、学校が有する陸上競技専用のグラウンド(特に私立大学に多い)が、日本陸上競技連盟の公認を受けている例も少なくない。
以下に屋外に設けられる陸上競技場について解説する。
目次
1 施設
1.1 トラック
1.2 フィールド
2 公認競技場の区分
3 第1種公認陸上競技場の一覧
3.1 北海道
3.2 東北
3.3 関東
3.4 中部
3.5 近畿
3.6 中国
3.7 四国
3.8 九州
4 脚注
4.1 注釈
4.2 出典
5 外部リンク
施設
競技が行われる部分は、周回走路である「トラック」と、跳躍や投擲などの競技を行う「フィールド」に分かれている。
トラックや助走路の表面はシューズのスパイクを受け止められるよう堅固で、かつ均一でほぼ水平でなければならない。第1-3種公認競技場では競技面は全天候舗装されている必要がある。これには古くからアンツーカなどの舗装材が使われてきたが、最近ではポリウレタンまたは合成ゴム舗装が一般的である。舗装の色はほとんどがレンガ色であるが、近年は青色のトラックを持つ競技場も増えている。
第4種公認競技場も全天候トラックが多いが、一部の地方競技場ではシンダー舗装(土のトラック)になっているもの、あるいは全天候型とシンダー舗装を併用しているものもある(以前は第3種でもシンダーや砂のトラックが認められていたが、後述の規約の改正により、現在は第3種以上は必ず全天候型トラックを保有することが義務付けられており、特に第1種公認競技場の場合はそれを設置した第3種以上相当の補助競技場を必ず設置することが第1種認定の前提となった。ヤンマースタジアム長居・ヤンマーフィールド長居のように、メイン・補助の両競技場とも第1種認定を受けているスタジアムもある)。
国際陸上競技連盟(IAAF)が規定する陸上競技場の方位は、南北軸から東西に向かう角度が、22.5度未満とされているという[1]。
トラック
徒競走、リレー競走、ハードル競走、障害物競走などが行われる周回走路。平行な2本の直走路と、それらをつなぐ2つの曲走路からなり、選手達は反時計回りにこれを周回する。その内端にはコンクリート、あるいは適当な材質の縁石を設けることになっている。1周の距離は400mが標準だが、第3種以下の競技場ではそれより小さなものもある。
- レーン
- 走路は白線によって各レーンが区切られている。400m以下の競走では選手は各々決められたレーンを走らなければいけない(セパレートコース)。800m競走など、スタートから一定距離はセパレートコースで、その後はどこを走っても良いオープンコースになる種目もある。レーンの幅は122cmと決められており、内側のラインから20cmの部分(ただし、トラック内側の縁石が走路より高くなっている場合は、最内レーンのみ縁石から30cmの部分)を走るものとして距離が測定されている。また中距離走より距離の長いトラック種目や1600メートルリレー走の2走以降は、必然的に最も内側の1レーンを走る。そのため、使用頻度によっては1レーン、あるいはインレーンほど表面の傷みが激しく、短距離走などでは記録にも影響を及ぼすおそれもある。近年9レーンまである陸上競技場が第1種、第2種公認となった背景には、短距離走などで2レーンから9レーンの8つのレーンを使うことで、1レーンの使用機会をできるだけ減らし、表面を保護する目的もある。
- フィニッシュライン、スタートライン
- 一方の直走路の終端部にはフィニッシュラインが引かれており、競技の種類や距離にかかわらずこのラインがゴールとなる。このラインから競技距離分だけ離れた場所にはスタートラインが引かれている。100m競走や110mハードルでは直走路の延長部分にスタートラインが引かれ、直線コースで競走が行われる。セパレートコースを用いる200mから800mの競走ではレーンごとにスタートラインが引かれている。1,000m以上の競走ではオープンコースであるため、スタートラインは最初の曲走路入り口を中心とした弧になっている。
- 水濠
- 一方の曲走路の内側に水濠が設けられ、そこへ進入するための走路も作られる。
- 日本の競技場のみ、外側に設けられている。
フィールド
投擲競技や跳躍競技が行われる部分。トラック内側をインフィールド、外側をアウトフィールドと呼ぶ。インフィールドをサッカー競技やラグビー競技などを行うスペースとして利用できる競技場も多い。このような競技場の場合、芝生の保護という観点から、通常は投擲競技の練習ができず、サブトラックなどで行われることが増えている。
走幅跳・三段跳には直線助走路と着地場所である砂場、棒高跳には直線助走路とポールを突き立てるためのボックス、走高跳には扇形の助走路が設けられる。ハンマー投と円盤投のサークルは兼用されることが多いが、砲丸投のサークルは別に設けなければならない。やり投の助走路は直線で36.5mある上に、やりの飛距離が100m近くにもなるため、トラックの曲線部を横断する形で設けられることが多い。
走幅跳・三段跳の助走路と砂場はアウトフィールドに設けられることが多い。これらをインフィールドに設けてしまうと、インフィールド内の面積が制限され、サッカーやラグビーのピッチの規格に合わなくなってしまい、事実上陸上競技専用競技場になってしまうためである。走幅跳・三段跳の直線助走路と砂場がインフィールドとアウトフィールドどちらにあった方が競技を行いやすいかは競技者によって区々のようである。
公認競技場の区分
国際陸上競技連盟(IAAF)公認の競技場には、オリンピックや世界選手権などIAAF主催・管轄大会に必要なクラス1や、国際招待大会に必須のクラス2がある。
日本陸上競技連盟公認の陸上競技場には、第1種から第4種までの区分がある(過去には第5種競技場という区分もあったが、2007年に廃止され、事実上は第4種に統合されている[2][3])。また陸上競技場の施設に自転車競技場が併設されている場合は、「第○種・乙公認競技場」と表記することや、各競技場種別で開催できる競技大会の内容についても2011年から規定が改正されている[4]。主な項目についてその規格を示す。
項目 | 第1種 | 第2種 | 第3種 | 第4種 | |
---|---|---|---|---|---|
使用できる大会[4] | 日本選手権や国民体育大会など、日本陸連が主催する全国規模、および国際的な大会 | 加盟団体陸上競技選手権大会、及び地方における主要な大会 | 加盟団体等の対抗競技会等 | 加盟団体の加盟団体の大会・記録会[注 1] | |
トラックとフィールドの舗装材 | 全天候型舗装 | 全天候型舗装が望ましいが土質のものでも可 | |||
走路一周の距離 | 400m | 200m 250m 300m 400m | |||
直走路 | 8又は9レーン[注 2] | 8レーン | 6レーン以上 | ||
曲走路 | 8又は9レーン[注 2][注 3] | 6レーン以上 | 4レーン以上 | ||
3000m障害用施設 | 必要 | なくてもよい | |||
公認長距離競走路 | 近くにあることが望ましい | ||||
走幅跳、三段跳の跳躍場 | 6か所以上 | 1か所以上 | 各1か所以上、条件に合わない場合は一部を欠いてもよい | ||
棒高跳の跳躍場 | 6か所以上 | 4か所以上 | |||
砲丸投のサークル | 2か所以上 | 1か所以上 | |||
円盤投、ハンマー投げのサークル | 兼用可で2か所以上 | ||||
インフィールド[2] | 天然芝・人工芝 | ||||
雨天走路[4] | 舗装材は屋外走路と同じもの。メインスタンドかバックスタンドのいずれかに設置すること | 設置することが望ましい[5] | なくてもよい[5] | ||
補助競技場 | 全天候舗装、走路一周400mで第3種相当[注 4][6] | 全天候舗装が望ましい | なくてもよい | ||
電気機器の配管 | 設備を有すことが必要 | 設備を有すことが望ましい | なくてもよい | ||
電光掲示板 | 設置することが望ましいが、大規模競技会が行われる場合は仮設でもよい[7][5] | あることが望ましい[5] | なくてもよい[5] | ||
夜間照明設備 | 1m220の高さで、平均照度1000ルクス程度、フィニッシュラインの箇所は1500ルクス以上を確保すること[7] | あることが望ましい[5] | なくてもよい[5] | ||
観客席の収容人員 | 15,000人以上[注 5][7] | 5,000人以上[注 6][5] | 相当数 |
競技場の運営者から公認申請があった場合、日本陸上競技連盟は検定員、技術役員を派遣して実測調査を行い、施設用器具委員会における審査を行い公認の可否を決定する。公認の有効期間は各種とも5年[8][注 7]であるが、競技場の改変を行った場合は再検定が必要となる。また、公認要件を満たさなくなった場合や、所有者・管理者が有効期間満了前に公認更新を行わなかった場合には公認は取り消される。
公認料は上位の種別ほど高く、第1種では新規公認86.4万円、継続公認43.2万円(2014年現在)が必要となる。このため、第1種や第2種の要件を満たしていても財政的理由から下位の種別で公認を受けている施設もある。
第1種公認陸上競技場の一覧
2018年現在、日本陸上競技連盟により第1種公認を受けている陸上競技場は以下の通りである。このうち「☆マーク」は国際陸連クラス1公認、「★マーク」は同クラス2公認の競技場であることを示す[9]。
尚、日本国内に所在して、第2種以下の公認を受けている陸上競技場については
北海道
- ★札幌厚別公園競技場(札幌市厚別区)
東北
- ★北上総合運動公園陸上競技場(岩手県北上市)
宮城スタジアム(ひとめぼれスタジアム宮城)(宮城県利府町)
秋田県立中央公園陸上競技場(秋田県秋田市)
山形県総合運動公園陸上競技場(NDソフトスタジアム山形)(山形県天童市)
福島県営あづま陸上競技場(とうほうみんなのスタジアム)(福島県福島市)
関東
- ★笠松運動公園陸上競技場(茨城県那珂市・東海村)
群馬県立敷島公園県営陸上競技場(正田醤油スタジアム群馬)(群馬県前橋市)- ★熊谷スポーツ文化公園陸上競技場(埼玉県熊谷市)
千葉県総合スポーツセンター陸上競技場(千葉県千葉市稲毛区)- ★横浜国際総合競技場(日産スタジアム)(神奈川県横浜市港北区)
中部
- ☆新潟スタジアム(デンカビッグスワンスタジアム)(新潟県新潟市中央区)
富山県総合運動公園陸上競技場(富山県富山市)
石川県西部緑地公園陸上競技場(石川県金沢市)
福井運動公園陸上競技場(9.98スタジアム)(福井県福井市)
山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場(山梨中銀スタジアム)(山梨県甲府市)- ★松本平広域公園陸上競技場(長野県松本市)
岐阜メモリアルセンター長良川競技場(岐阜県岐阜市)
静岡県草薙総合運動場陸上競技場(静岡県静岡市駿河区)- ★静岡県小笠山総合運動公園スタジアム(エコパスタジアム)(静岡県袋井市)
- ★名古屋市瑞穂公園陸上競技場(パロマ瑞穂スタジアム)(愛知県名古屋市瑞穂区)
近畿
- ★三重県営総合競技場(三重交通G スポーツの杜 伊勢)(三重県伊勢市)
京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場(京都府京都市右京区)- ☆長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)(大阪府大阪市東住吉区)
長居第2陸上競技場(ヤンマーフィールド長居)(大阪市東住吉区)
加古川運動公園陸上競技場(兵庫県加古川市)
兵庫県立三木総合防災公園陸上競技場(兵庫県三木市)
奈良市鴻ノ池陸上競技場(ならでんフィールド)(奈良県奈良市)- ★紀三井寺運動公園陸上競技場(和歌山県和歌山市)
中国
- ★鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場(コカ・コーラウエストスポーツパーク陸上競技場)(鳥取県鳥取市)
島根県立浜山公園陸上競技場(島根県出雲市)
岡山県総合グラウンド陸上競技場(シティライトスタジアム)(岡山県岡山市北区)
広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)(広島県広島市安佐南区)
維新百年記念公園陸上競技場(維新みらいふスタジアム)(山口県山口市)
四国
徳島県鳴門総合運動公園陸上競技場(鳴門大塚スポーツパーク・ポカリスエットスタジアム)(徳島県鳴門市)
香川県立丸亀競技場(Pikaraスタジアム)(香川県丸亀市)- ★愛媛県総合運動公園陸上競技場(ニンジニアスタジアム)(愛媛県松山市)
- ★高知県立春野総合運動公園陸上競技場(高知県高知市)
九州
東平尾公園博多の森陸上競技場(福岡県福岡市博多区)
長崎県立総合運動公園陸上競技場(トランスコスモススタジアム長崎)(長崎県諫早市)
熊本県民総合運動公園陸上競技場(えがお健康スタジアム)(熊本県熊本市東区)
大分スポーツ公園総合競技場(大分銀行ドーム)(大分県大分市)
宮崎県総合運動公園陸上競技場(KIRISHIMAハイビスカス陸上競技場)(宮崎県宮崎市)
鹿児島県立鴨池陸上競技場(白波スタジアム)(鹿児島県鹿児島市)
沖縄県総合運動公園陸上競技場 (タピック県総ひやごんスタジアム)(沖縄県沖縄市)
脚注
注釈
^ これらには対抗競技会・記録会のほか、旧第5種競技場相当に当たる学校内競技会やクラブ対抗競技会が含まれる。- ^ ab1レーンの幅は1m220、または1m250とする
^ 尚、国際陸上競技連盟の"IAAF Track and Field Facilities Manual 2008 Edition 2.2.1.1 Layout of the 400m Standard Track"によれば、IAAFコンチネンタルカップ(World Cup in Athletics)に使用する競技場は9レーン必須となっている。また、同マニュアルの当該箇所には「外側のレーンの走者が有利になりすぎるため、曲走路の上限は9レーンとする」旨の記載がある。
^ 2010年の規約改正で、第1種公認競技場として認定する場合、補助競技場のトラックも全天候型舗装で、かつ第3種公認以上の規模を充足する物を設置することが義務付けられるようになった
^ 芝生席を含む。少なくともメインスタンドは屋根を敷設し、7000人以上収容の座席を設置すること
^ 芝生席を含む。少なくともメインスタンドは1000人以上収容程度の座席を設置すること。かつ、屋根を敷設することが望ましい
^ 第5種があった時代はその競技場に対する更新期間は3年だった
出典
^ 3-11 第4節. 施設計画(個別) 1. 建築性能 「新国立競技場整備事業 業務要求水準書」 平成27年9月1日 日本スポーツ振興センター- ^ ab陸上競技場と道路コース - 日本陸上競技連盟ハンドブック
^ 第1・2種公認競技場の基本仕様- ^ abc「屋外体育施設のルール」2011年の規則変更点について
- ^ abcdefgh滋賀県内の既存陸上競技場(滋賀県議会)
^ 厚別公園競技場(改修工事)が完成しました! -IAAFのCLASS2に公認申請中です(札幌市陸上競技連盟)- ^ abc施設の規模・機能について(栃木県)
^ 公認陸上競技場および長距離競走路ならびに競歩路規程
^ “公認陸上競技場・競走路・競歩路”. 日本陸上競技連盟. 2017年9月19日閲覧。
外部リンク
- 日本陸連主要競技場一覧
主要競技場一覧 - 月刊陸上競技社