パラオ語




















パラオ語
ベラウ語

Palauan (Belauan)
話される国
パラオの旗 パラオ
地域
西部太平洋
話者数
1万5,000人
言語系統

オーストロネシア語族

  • マレー・ポリネシア語派

    • 西マレー・ポリネシア語群
      • パラオ語

表記体系
ラテン文字
公的地位
公用語
パラオの旗 パラオ
言語コード
ISO 639-1
なし
ISO 639-2
pau
ISO 639-3
pau
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パラオ語ベラウ語とも)はパラオ共和国の現地人の母語で同国の公用語である。オーストロネシア語族のマレー・ポリネシア語派の西語群に属し、チャモロ語と並びミクロネシアの2言語のうちの1つと考えられている。話者は、パラオ国内を中心に約1万5,000人いると推定されている[1]




目次





  • 1  音韻体系

    • 1.1 二重母音



  • 2 基本会話


  • 3 数詞


  • 4 外来語

    • 4.1 スペイン語


    • 4.2 ドイツ語


    • 4.3 日本語


    • 4.4 英語



  • 5 脚注


  • 6 参考文献


  • 7 外部リンク




 音韻体系


パラオ語における音素には、6個の母音と10個の子音があるとされる[2]。 国際音声記号(IPA)に従うと、以下のように示される。














































子音


両唇音

歯茎音

軟口蓋音

声門音

鼻音


m



ŋ


破裂音


b

t

d

k


ʔ


摩擦音


s




側音



l



はじき音



ɾ


パラオ語の音素は比較的少ないが、多くの音素が前後の音環境に応じ異音として現れる(b→pʰなど)。異音を含めた完全な子音の一覧は、以下の通りとなる。









































































子音(異音を含む)


両唇音

歯間音

歯茎音

硬口蓋音

軟口蓋音

声門音

鼻音


m



n



ŋ


破裂音

p[pʰ]

b 


t[tʰ]

d 


k[kʰ]

ɡ 

ʔ 


摩擦音


θ

ð

s





接近音

(側音)







j


w





l




はじき音




ɾ




ふるえ音




r




二重母音


パラオ語には複数の二重母音が存在する。そのリストは以下のとおりである(Zuraw (2003))。



































































二重母音

IPA

単語例

意味

/iɛ/

babier
紙(ドイツ語からの借用)

/ɛi/

mei
来る

/iu/

chiukl
(歌)声

/ui/

tuich
トーチ

/io/

kikiongel
汚い

/oi/

tekoi
言葉、単語

/ia/

diall


/ai/

chais
ニュース

/ɛu/

teu
広さ、幅

/uɛ/

sueleb
午後

/ɛo/

Oreor
コロール (パラオの旧首都)

/oɛ/

beroel


/ɛa/

beached


/aɛ/

baeb
パイプ (英語からの借用)

/uo/

uos
馬 (英語からの借用)

/ou/

merous
配る、分配する

/ua/

tuangel
ドア

/au/

mesaul
疲れた

/oa/

omoachel


/ao/

taod
フォーク


基本会話





























パラオ語
読み方
意味
Alii!アリーこんにちは/やあ
Ungil tutau.ウンギル ツ(トゥ)タウおはようございます
Ungil sueleb.ウンギル スウェルブこんにちは
Ungil kebesengei.ウンギル カブスイゲイこんばんは
Choi, o'oi.オ オイはい/いいえ
Ng diak.ディアックいいえ/はい
Me sulang.メ スーランありがとう
Mechikung.メイクンさようなら


数詞


  • 1. Tang

  • 2. Cherung

  • 3. Chedei

  • 4. Cheuang

  • 5. Cheiim

  • 6. Chelolm

  • 7. Cheuid

  • 8. Cheiai

  • 9. Chetiu

  • 10. Machod

パラオ語では数える対象によって異なる数詞セットを用いる。例えば人数を数えるときはtang(1人)、terung(2人)、tedei(3人)……、バナナの房はteliud(1房)、ereiud(2房)、edeiud(3房)……、長さのある物はteluo(1本)、eruo(2本)、edeuo(3本)……のように表現する。「どのような事物の数量であるか」を表す点は日本語等における助数詞と同じだが、接尾辞でなく単語自体が独立している点は特徴的である。



外来語


パラオは19世紀から20世紀にかけてスペイン、ドイツ、日本、アメリカによって統治されたため、パラオ語の単語には数多くの外来語がある。本項ではその一部を下の表にまとめる[3]



スペイン語


スペイン語からは、主にキリスト教関連の語彙が定着した。





























パラオ語
意味
元となったスペイン語
BaskuaイースターPascua
Changhel天使Angel
Ikerasia教会Iglesia
KusarangスプーンCuchara
MaisトウモロコシMaíz
Papa教皇Papa
RosarioロザリオRosario
Soldau軍人Soldado


ドイツ語


ドイツ語からは日用品語彙の借用が多い。






































パラオ語
意味
ドイツ語
備考
BabierPapier
BensterFenster日本語由来madoも使われている。
chasberingアスピリンAspirin
アセチルサリチル酸、日本語経由。
Chausbengdik覚えるAuswendig (-lernen)
Hall!止まれ!Halt!現在では英語由来のStob(Stop)の方がよく使われている。
Rrat自転車Rad
SlibsネクタイSchlips
Taber黒板Tafel日本語由来のKokubangも使われる。


日本語




反対票を訴える立て看板。文中の「SENKYO」は、日本語の「選挙」に由来を発するパラオ語である。


歴史的経緯から、パラオ語における日本語からの借用語は非常に多い。パラオ語の単語の約25%が日本統治時代の日本語が由来の単語であるとされ[要出典]、政治用語・学術用語から日常表現まで幅広く用いられる。さらに単語にとどまらず、例えば聖歌隊の練習中に「Ichirets ni narande! (一列に並んで!)」「Genki dasite! (元気出して=もっと元気良く!)」と言い合う[4]など、フレーズとして日本語が定着している。日本語教育を受けていない若い世代や子どもたちも「それが日本語由来であると意識せずに」用いており、定着につながっている[5]。日本語由来の語を人名に用いることもあり、「タロウ」「クニオ」「ヨシコ」などの他、「ジンジャ(神社)」「クルマ」など日本では人名に用いない語を用いる例もある。
























































































































































































































パラオ語
意味
元の日本語及び備考
Basio場所
Bengngos弁護士
Bento弁当
Bungsu分数
Chambangあんパン
Chabulabangあんドーナツ「油」「パン」
Chabunai危ない
Chaikodetsiu「あいこでしょ」
Chameiu飴湯
Chanzeng安全
Chazi daiziobおいしい「味」「大丈夫」
Chazinomoto味の素
Daitorio大統領
Daiziob大丈夫
Dengki電気
Dengkibasira電信柱「電気柱」
Denwa電話
Doseiどうせ
Emonkakeハンガー「衣紋掛け」
Haibio結核「肺病」
Iakiu野球
Ioroskuよろしく
Katsudo映画「活動写真」
Keizai経済
Ketsけち
Kigatsku気が付く
Kigatskani気が付かない
Kimots気持ち
Komengごめんなさい、すみません「ごめん」
Mahobing魔法瓶
Mame
Manaitaまな板
Mangngaマンガ
Mazui不味い、へた

Mihong見本
Mongk文句
Motsio盲腸
Musiba虫歯
Namari
Nappa菜っ葉
Nasナス
Nengiネギ
Nezimauasねじ回し
Nimots荷物
Ninzinニンジン
Sapporo Ichibang
インスタントラーメン(総称)
「サッポロ一番」
Sarumata下着「猿股」
Seizi政治
Sempuki扇風機
Senkyo/Senkio選挙
Sensei先生
Simpai心配
Siotots
乾杯(掛け声)
「衝突」。戦前の日本語俗語。
Sirangkao知らん顔
Skoki飛行機
Skozio空港「(水上飛行艇)飛行場」 [6]
Sodang相談
Songngai損害
Tabi前ゴムシューズ「足袋」
Taiheio太平洋
Tobo逃げる「逃亡」
Tokuni特に
Tongangカボチャ「冬瓜」。同じウリ科植物から転用。
Toseng渡船Uatasibune(渡し船)とも。
Tsitsibandoブラジャー「乳バンド」
Tsios調子
Tskarenaos
ビールを飲む
「疲れ」「治す」
Zeitak/Seitak贅沢
Ziangkempoジャンケンポン
Zibiki/Ziteng辞書「字引き」「辞典」


英語


英語の単語は戦後になってから入った単語もあるが、日本統治時代に日本語を経由して入った単語や和製英語もある。






























































































パラオ語
日本語
英語
備考
Boi少年Boy
BorボールBall
ChaiskeekiアイスケーキIce cake日本語経由(和製英語)。アイスキャンディーのこと。
ChaiskurimアイスクリームIce cream
Chambelangs救急車Ambulance
ChasuartアスファルトAsphalt
Dainamo発電機Dynamo
HomrangホームランHome run
Kab曲線Curve
KareカレーCurry日本語経由。ご飯にかけた場合はRaiskare(ライスカレー)。
KasorinガソリンGasoline日本語経由。現在ではアメリカ英語由来のKas(Gas)の方がよく使われている。
KeikケーキCake
Kurob手袋glove
MahuraマフラーMuffler
襟巻き、消音機
MaskuマスクMask
Miuzium博物館Museum
Ranningnguランニング(シャツ)Running (-shirt)日本語経由(和製英語)
RazioラジオRadio日本語経由
SabisサービスService
TenisテニスTennis
TibiテレビTelevisionTelevisionの略(TV)から。
TsuingamチューイングガムChewing gum


脚注


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  1. ^ Ethnologue report for language code: PAU


  2. ^ Only 5 vowel phonemes are listed in Wilson 1972 because she avoids the issue of how to treat indeterminate underlying vowels. The vowel chart here tentatively reflects the analysis of Flora (1974), who treats indeterminate vowels as instances of underlying ə. Furthermore, the analysis of Palauan [w] in Flora 1974 treats it as a phoneme distinct from /u/, while [w] is merely an allophone of /u/ according to Wilson (1972). The consonant chart tentatively reflects Wilson's analysis.


  3. ^ Japanese and Other Loanwords in Palauan(ラナイ本願寺のホームページ 英語)


  4. ^ 森岡純子「パラオにおける戦前日本語教育とその影響」第3章「戦前日本語教育の影響」、『山口幸二先生退職記念集』pp.371、立命館大学法学部、2006年


  5. ^ 森岡、同


  6. ^ 『軍事研究 平成29年3月号』(ジャパン・ミリタリー・レビュー、2017年)、p.121 - 菊池雅之稿: ワールド・フォーカス175 「しもきた」とLCAC 統合運用で自衛隊パラオ訪問 日本海軍の“スベリ”に上陸



参考文献



  • Flora, Jo-Ann (1974), Palauan Phonology and Morphology, PhD Dissertation: University of California, San Diego 


  • Wilson, Helen (1972), “The Phonology and Syntax of Palauan Verb Affixes”, University of Hawaii Working Papers in Linguistics 4 (5), http://tekinged.com/misc/pdfs/phonology_wilson.pdf 


  • Zuraw, Kie (2003), “Vowel Reduction in Palauan Reduplicants”, in Andrea Rackowski; Norvin Richards, Proceedings of the Eighth Annual Meeting of the Austronesian Formal Linguistics Association, Cambridge: MITWPL #44, pp. 385–398, http://roa.rutgers.edu/files/787-1205/787-ZURAW-0-0.PDF 


外部リンク





  • Ethnologue report for Palauan (英語) - エスノローグ


  • Glottolog 2.7 - Palauan (英語)


  • Palau (フランス語)


  • Palau: Airai -- Onwards: Language (英語)


  • PREL - PALM: Palauan (英語)(パラオ語)


  • WALS Online - Language Palauan (英語)






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