PBY (航空機)
PBY/PB2B/PBV/PBN カタリナ
OA-10 カタリナ
カンソー/カタリナ
アリューシャン列島上空を飛行するPBY-5A
(第61哨戒飛行隊所属、1943年撮影)
用途:哨戒機、爆撃機、救難捜索機、消防機
分類:飛行艇(哨戒爆撃機)
設計者:アイザック・M・ラドン
製造者:
コンソリデーテッド・エアクラフト社(開発)
ボーイング・カナダ社
カナディアン・ヴィッカース社- 海軍航空機工廠
運用者:
アメリカ合衆国- 海軍
陸軍航空軍)
イギリス(空軍)
カナダ(空軍)
日本(海上自衛隊)
初飛行:1935年3月28日
生産数:3,305機
生産開始:1936年
運用開始:1936年10月(アメリカ海軍)
退役
1957年1月(米海軍予備軍)
1979年(ブラジル空軍)
運用状況:退役(軍用として)
ユニットコスト:90,000米ドル(1935年)
PBY カタリナ(Consolidated PBY Catalina )は、アメリカ合衆国のコンソリデーテッド・エアクラフト社が開発した飛行艇である。
1935年に初飛行、第二次世界大戦中はアメリカ海軍を始めとして、連合国各国で対潜哨戒、沿岸警備、海難救助などに用いられた。またアメリカ陸軍航空軍でも捜索救難機として水陸両用のOA-10Aカタリナを採用した。軍を退役したのちは現在まで消防機として各所で用いられている。
コンソリデーテッド社の他にボーイング・カナダ社、カナディアン・ヴィッカース社、海軍工廠でも生産され、それらはPB2B、PBV、PBNの制式名で呼ばれた。
目次
1 開発
2 機体
3 運用
4 各型
5 性能諸元
6 現存する機体
7 登場作品
7.1 映画
7.2 ゲーム
8 脚注・出典
9 関連項目
開発
アメリカ海軍における哨戒用飛行艇として、1933年よりXP3Y-1(社内名称:モデル28)として開発が開始された。1935年3月に初飛行し、同年6月に量産発注がなされ、PBY-1の名称が付けられている。名称変更は哨戒機「P」から哨戒爆撃機「PB」 への分類変更によるものである。「Y」はコンソリデーテッド社を表す。後にPBYは『カタリナ』または『キャット』と呼ばれるようになる。双発エンジンにもかかわらず巡航速度は200km/hと決して速くはなかった。だが航続距離は4800km以上、連続飛行時間は15時間にも及んだ。
機体
双発のレシプロ機であり、主翼はパラソル配置(胴体から離れた高翼単葉)となっている。主翼端にフロートを持つが、これは格納式で、飛行中は主翼と一体となり、空気抵抗を減じている。水平尾翼は垂直尾翼の中ほどにあり、垂直尾翼は方向舵の比率が高い。
運用
1937年からアメリカ海軍で部隊配備が開始され、哨戒任務のほか救難任務にも使用された。第二次世界大戦においても活躍し、アメリカ海軍のほか、アメリカ陸軍航空隊、アメリカ沿岸警備隊、そして連合国のイギリス、カナダ、オーストラリアなどでも使用され、日本でも1956年に海上自衛隊に2機が供与されたが、引き渡された時点で旧式であったため、1960年に全機除籍。
太平洋戦争開戦直前の1941年12月7日には、マレー作戦に参加する上陸部隊を乗せた輸送船団の上空護衛を行っていた日本陸軍の九七式戦闘機が、哨戒中のカタリナを(正式な開戦の前であったが)撃墜した。これは同戦争における最初の連合国軍の損失であった。
第二次世界大戦後には多くが民間に払い下げられ、アメリカやブラジル、カナダ、台湾(チャイナエアライン、トランスアジア航空)などで旅客機として使用されたものもある他、消防機としても用いられている。
カタリナはスウェーデン空軍機(スウェーデン空軍名称Tp 47)としても用いられたが、1952年6月16日、エストニアの北で行方不明となったDC-3機(C-47)を捜索していた時にソビエト軍機に撃墜された。1956年になってソビエト連邦は、DC-3機の撃墜を認めたが、当時はこの情報は公表されなかった。2003年にDC-3機と共に発見されている。冷戦期間中の外交的危機となったこの事件は、その名称をとって「カタリナ事件」と呼ばれている。
各型
- XP3Y-1:試作機。
- PBY-1:初期量産型。60機生産。
- PBY-2:水平尾翼の改修。50機生産。
- PBY-3:エンジンをR-1830-66(900馬力)に換装。66機生産。
- PBY-4:エンジンをR-1830-72(1,050馬力)に換装。33機生産。[1]
- PBY-5:エンジンをR-1830-90(1,200馬力)に換装。垂直尾翼後縁を直線状に変更。胴体左右の後部銃座の風防をスライド式から大型ブリスター型へ変更し、射撃範囲を拡大。684機生産。英軍名称 Catalina Mk.I。
- PBY-5A:機首下面および胴体側面に引き込み式の車輪を装備。水陸両用機となる。802機生産。英軍名称 Catalina Mk.III。[2]
- PBY-6A:AN/APS-3レーダーを増備。水陸両用機。安定性向上のため垂直尾翼を大型化。175機生産。海上自衛隊に2機が供与。[3]
- PB2B-1:PBY-5のボーイングでの生産型。
- PB2B-2:PBY-6Aのボーイングでの生産型。67機生産。
- OA-10:アメリカ陸軍航空軍向けの機体。
- OA-10A:PBY-5Aに準拠した機体。
- OA-10B:PBY-6Aに準拠した機体。
性能諸元
機体名 | PBY-4[1] | ||
---|---|---|---|
ミッション | PATROL | BOMBER | TORPEDO |
全長 | 65ft 10in (20.07m) | ||
全幅 | 104ft (31.7m) | ||
全高 | 18ft 6in (5.64m) | ||
翼面積 | 1,400ft² (130.06m²) | ||
空虚重量 | 14,999lbs (6,803kg) | ||
離陸重量 | 29,244lbs (13,265kg) | 30,000lbs (13,608kg) | |
搭載燃料 | 1,750gal (6,624ℓ) | 1,185gal (4,486ℓ) | 1,180gal (4,467ℓ) |
携行装備 | - | 1,000lbs爆弾×4 | MK13魚雷×2 |
エンジン | Pratt & Whitney R-1830-72 (1,050Bhp) ×2 | ||
最高速度 | 194mph/12,000ft (312km/h 高度3,658m) | 185mph/12,000ft (298km/h 高度3,658m) | 188mph/12,000ft (303km/h 高度3,658m) |
航続距離 | 4,110mile (6,614km) | 2,630mile (4,233km) | 2,400mile (3,862km) |
武装 | AN/M2 12.7mm機関銃×2 (弾数計800発) + AN/M2 7.62mm機関銃×2 (弾数計1,500発) | ||
機体名 | PBY-5A[2] | ||
ミッション | PATROL | A.S. PATROL | TORPEDO |
全長 | 63ft 10.44in (19.47m) | ||
全幅 | 104ft (31.7m) | ||
全高 | 20ft 2in (6.15m) | ||
翼面積 | 1,400ft² (130.06m²) | ||
空虚重量 | 20,910lbs (9,485kg) | ||
離陸重量 | 33,975lbs (15,411kg) | 35,420lbs (16,066kg) | 35,300lbs (16,012kg) |
搭載燃料 | 1,463gal (5,538ℓ) | 1,000gal (3,785ℓ) | |
携行装備 | - | 325lbs爆雷×4 | MK13魚雷×2 |
エンジン | Pratt & Whitney R-1830-92 (1,200Bhp) ×2 | ||
最高速度 | 179mph/7,000ft (288km/h 高度2,134m) | 175mph/7,000ft (282km/h 高度2,134m) | 173mph/7,000ft (278km/h 高度2,134m) |
航続距離[4] | 2,545st.mile (4,096km) | 2,350st.mile (3,782km) | 1,500st.mile (2,414km) |
武装 | AN/M2 12.7mm機関銃×2 (弾数計840発) + AN/M2 7.62mm機関銃×3 (弾数計2,600発) |
現存する機体
機体番号の欄は、無表記が米海軍航空局の機体番号(BuNo.)であり、前にRAF、RAAF、RCAF、RDAF、RSwAFとあるものはそれぞれイギリス空軍、オーストラリア空軍、カナダ空軍、オランダ空軍、スウェーデン空軍における番号である。
・すべての機体を掲載しているわけではない。その他機体はウォーバード・レジストリ
・出典は各博物館サイトとウォーバード・レジストリに拠る。
型名 | 番号 | 機体写真 | 国名 | 所有者 | 公開状況 | 状態 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PB2B-2 | 44248 RAF JX630 RAAF A24-385 | オーストラリア | パワーハウス・ミュージアム | 公開 | 静態展示 | 飛行登録番号であるVH-ASAが 塗装されている。 | |
PBY-5A | 02459 | オランダ | スティッチング・ネプチューン・アソシエイション (Stichting Neptune Association) リリステッド空港に保管 | 公開 | 飛行可能 | ||
PBY-5A | 05028 | 手前 | アメリカ | 国立海軍航空博物館 | 公開 | 静態展示 | 分解され胴体のみ内部が見えるように展示されている。 |
PBY-5A | 08109 RDAF FM-57 RDAF 82-857 RDAF L-857 | ノルウェー | ソラ航空歴史博物館 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 928。 | |
PBY-5 | 08317 | アメリカ | 国立海軍航空博物館 | 公開 | 静態展示 | 純粋な水上機型として製造されたPBY-5である。 | |
PBY-5A | 33966 | アメリカ | ファンタジー・オブ・フライト[1] | 公開 | 修復待ち | ||
PBY-5A OA-10A | 33993 44-34033 | アメリカ | 国立アメリカ空軍博物館 | 公開 | 保管中 | ||
PBY-5A | 46522 | アメリカ | ティラムック航空博物館 | 公開 | 飛行可能 | ||
PBY-5A | 46582 | アメリカ | ジャック海軍航空基地 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 1946。 | |
PBY-5A | 46590 RAAF A24-387 | アメリカ | ピマ航空宇宙博物館 | 公開 | 修復待ち | 製造番号 2143。 | |
PBY-5A | 46595 | アメリカ | 国立アメリカ空軍博物館 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 1959。 | |
PBY-5A | 48287 | アメリカ | ユタ銀行 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 1649。 | |
PBY-5A | 48294 | アメリカ | トレーニングサーヴィス株式会社 (Training Services Inc) | 公開 | 飛行可能 | 製造番号 1656。 | |
PBY-5A | 48334 | 写真 | ニュージーランド | クラシックフライヤーズ博物館 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 1696。 |
PBY-5A | 48406 | アメリカ | サンディエゴ航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 1768。 | |
PBY-5A | 48419 | 写真 | ブラジル | 航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | |
PBY-5A | 48426 | 写真 | アメリカ | パームスプリングス航空博物館 | 公開 | 静態展示 | |
PBY-5A | RCAF 9742 | アメリカ | ローンスター航空博物館 | 公開 | 静態展示 | 製造番号 407。 | |
PBY-5A | RCAF 9767 21996 | フランス | カタリナ・エア・トラスト (Catalina Air Trust) | 公開 | 飛行可能 | ||
PBY-6A | 46662 | 写真 | アメリカ | ウィルソン・コニー・エドワーズ氏(Wilson Connie Edwards) | 非公開 | 飛行可能 | |
PBY-5A | 48375 | アメリカ | ファンタジー・オブ・フライト | 公開 | 飛行可能 | 製造番号 1737。 | |
PBV-1A Tp47 (PBY-5A) | RCAF 9810 RSwAF 47001 | スウェーデン | スウェーデン空軍博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
PBV-1A | RCAF 9815 | アメリカ | エヴァーグリーン航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
PBV-1A | RCAF 9825 | 写真 | アメリカ | ハロルド・カーロウ記念軍事博物館 (Harold Carlaw Memorial Military Museum) | 公開 | 保管中 | |
PBV-1A | RCAF 9830 RAF CV264 | カナダ | ケベック航空財団 (Foundation Aerovision Quebec) | 非公開 | 静態展示 | ||
PBV-1A | RCAF 9837 | カナダ | 北大西洋航空博物館 | 公開 | 静態展示 | [2] | |
PBV-1A | RCAF 11005 | イギリス | カタリナ航空機株式会社 (Catalina Aircraft Ltd.) | 公開 | 飛行可能 | 米陸軍航空隊で運用されたOA-10/44-33915号機の塗装がされている。 | |
PBV-1A | RCAF 11024 | カナダ | バッファロー・エアウェイズ | 非公開 | 保管中 | ||
PBV-1A | RCAF 11042 | 写真 | ギリシャ | アテネ・エアリフトサービス株式会社 (Athenian Airlift Service Ltd.) | 非公開 | 飛行可能 | 米海軍で運用された機体のマーキング、5B-PBY/31-P-5の塗装がされている。 |
PBV-1A | RCAF 11047 | アメリカ | ハンス・ローリドセン氏(Hans Lauridsen) | 非公開 | 修復中 | ||
PBV-1A | RCAF 11054 | ニュージーランド | カタリナグループ[3] | 公開 | 飛行可能 | ニュージーランド空軍のNZ4017号機の塗装がされている。 | |
PBV-1A | RCAF 11074 | 写真 | アメリカ | ウィルソン・エドワーズ氏 (Wilson Edwards) | 非公開 | 飛行可能 | |
PBV-1A | RCAF 11084 | カナダ | カナディアン・ウォープレイン・ヘリテージ[4] | 公開 | 飛行可能 | ||
PBV-1A | RCAF 11088 | 写真 | カナダ | バッファロー・エアウェイズ | 公開 | 静態展示 | |
PBV-1A | RCAF 11089 | アメリカ | 最高世代海軍博物館 (Greatest Generation Naval Museum) | 公開 | 飛行可能 | ||
PBV-1A | RCAF 11091 | カナダ | ニューファンドランド・ラブラドール州政府 | 公開 | 静態展示 | ||
PBV-1A | RCAF 11093 | カナダ | デイヴィッド・T・ドロシュ氏 (David T. Dorosh) | 非公開 | 保管中 | ||
PBV-1A | RCAF 11094 | 写真 | カナダ | ファーヴュウ航空機修復財団(FARS) | 公開 | 飛行可能 | |
PBV-1A OV-10A | 67918 44-33954 | 写真 | アメリカ | アラスカ航空博物館 | 公開 | 静態展示 |
登場作品
映画
- 『キングコングの逆襲』
- ドクター・フー一味の飛行艇として登場。北海道にキングコングが上陸したことを受けて迎えに来た海上自衛隊所属機と見せかけて主人公たちを拉致し、北極にある一味のアジトまで輸送する。
- 『トラ・トラ・トラ!』
アメリカ海軍所属機が登場。パールハーバーの上空を飛行するほか、地上に駐機していた機体が真珠湾攻撃による爆撃で破壊されてしまう。飛行シーンなどでは実物が、破壊されるシーンでは実物大セットや飛行不可能なスクラップが撮影に使用されている。地上で破壊されるカタリナは、明らかに骨格構造のない石膏模型である。
ゲーム
- 『War Thunder』
- アメリカツリーでPBY-5およびPBY-5a、ソ連課金機としてPBY-5a、イギリス課金機としてCatalina Mk.IVaが登場。
- 『艦隊これくしょん -艦これ-』
- PBY-5Aが登場。
- 『コール オブ デューティ ワールド・アット・ウォー』
日本海軍の特攻を受けて沈没したフレッチャー級駆逐艦の乗組員を救助するために着水し、救助活動を行う。
脚注・出典
- ^ abPBY-4 Catalina Specifications BU. OF AERO., NAVY DEPT. PERFORMANCE DATA
- ^ abPBY-5A Catalina Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
^ PBY-6A Catalina Specifications STANDARD AIRCRAFT CHARACTERISTICS
^ 武装を取り外したFERRYでの航続距離は2,800st.mile (4,506km)
関連項目
- K作戦
- カタリナ事件
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