市町村長
市町村長(しちょうそんちょう)とは、地方自治体である市・町・村の長であり、それぞれの長は市長・町長・村長と呼ばれる。市町村長はそれらの総称である。
目次
1 名称
2 日本
2.1 地位と職務
2.1.1 地位
2.1.2 職務・権限
2.1.3 議会との関係
2.2 補助機関
2.3 日本の市町村長の歴史
3 イギリス
4 イタリア
5 フランス
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
名称
本項では便宜上、市町村長としているが、地方制度は各国で異なるため国ごとに組織も名称も異なる。
イギリス
スコットランド以外の主要都市はロード メイヤー(Lord Mayor)、それ以外の市・町は『Mayor(メイヤー)』が肩書きとして使われる。Mayorはラテン語『mājor』(~より大きい)が語源である。- スコットランドでは、主要都市はロード・プロヴォスト(Lord Provost)が、それ以外の市・町は『プロヴォスト』と呼ばれる。
デンマーク
コペンハーゲン市長は『Overborgmester』、その他の市・町は『borgmester』
ドイツ- 主要な都市などの市長は『Oberbürgermeister』、その他の市・町は『bürgermeister』
フィンランド
ヘルシンキ市長は大統領から肩書きが送られ『ylipormestari』、一般的に市長をあらわす『kaupunginjohtaja』より多く使われる。
日本
日本の政治 |
---|
日本国憲法、日本法 |
天皇 |
国民(主権者) |
|
政府 |
|
立法 |
|
行政 |
|
司法 |
|
地方自治 |
|
市町村の首長であり、同時に独任制の執行機関でもある。同等の地位である東京都特別区首長の区長を含め、「市区町村長」(しくちょうそんちょう)と言うこともある。
地位と職務
地位
地方公務員法の規定により、地方公務員法の規制を受けない特別職地方公務員とされる。
市町村長は日本国憲法第93条の定めにより、住民による選挙で選ばれる。また、選挙権・被選挙権などは公職選挙法および地方自治法に規定される。
- 任期・資格
- 任期は4年。
- 満25歳以上の日本国民は原則として被選挙権を有する[1]。(禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者などは対象外)
国会議員又は地方公共団体の議会議員および常勤の職員との兼職は禁止。- 当該自治体と取引関係にある企業の取締役などの幹部との兼職は禁止。ただし、当該市町村が出資する企業[2](公営企業や第三セクター等)は除く。
- 解職・不信任
- 住民の直接請求の制度として、住民投票による解職(リコール)の制度がある。
議会には長の不信任の議決をする権限が与えられている。不信任の具体的な成立要件は不信任決議の記事を参照。- 不信任を受けた場合、長は10日以内に議会を解散するか辞職するかを迫られることになるが、何れも選択しなかった場合は失職する。また、議会を解散した場合、選挙後の最初の議会において再度不信任された場合は失職する。
職務・権限
市町村長は市町村を代表する独任制の執行機関にして、市町村の組織を統括・代表し、また、事務を管理し執行する。具体的には、市町村の予算を調製・執行したり、条例の制定・改廃の提案及びその他議会の議決すべき事件について、議案を提出したりすることができる。(地方自治法第147~149条)
簡単に言うと、市町村の事務のうち、他の機関[3]が処理すると定められているものを除いた全てを担当する。
他、補助機関である職員を指揮監督すること、市町村内の公的機関の総合調整を図るために必要な措置を行えることなどが定められている。
議会との関係
市町村長は、上述の議案提出権のほか、議会の議決に対して異議のある場合は再議に付すことができる(いわゆる拒否権の行使)。ただし、議会の3分の2以上の多数で再議決された場合はその議決は確定する。また、議決が違法であると認める場合は都道府県知事に審査を求めることが出来る。
また、議会の権限に関する事項において、議会が決定しない場合や委任の議決がある場合など、地方自治法の定める場合において、職権で事件を処理することができる。これを専決処分という。
そして、不信任の議決を受けた場合と、不信任の議決を受けたと見なせる場合[4]に限られるが、議会を解散する権限も持つ[5]。
以上のように、拒否権のみならず、議案提出権や議会解散権をも持つ。
補助機関
- 副市町村長
- 市町村長を補佐し、その命を受け政策及び企画をつかさどり、その補助機関たる職員の担任する事務を監督するとともに市町村長の職務を代理し、またその権限の一部の委任を受けて事務を執行することとされている。2007年3月までは同様の職として助役が置かれていた。
- 会計管理者
- 会計事務をつかさどる。改正地方自治法の施行により2007年3月31日限りで収入役は廃止され、会計管理者という一般職の職員となった。ただし、特例により、2007年3月31日現在に在職していた収入役はその任期が満了するまで在任した。
- 職員
- 一般職に属する地方公務員。以前は「吏員その他の職員を置く」とされ、うち吏員は技術吏員と事務吏員に分けられていた。
- 専門委員
- 長の委託により調査研究を行うために置かれる非常勤の職員。学識経験者があてられる。
日本の市町村長の歴史
この節の加筆が望まれています。 |
[1]
イギリス
イギリスでは市長に直接公選制を導入するかどうかは各自治体に委ねられており全ての都市で公選制が採用されているわけではない。直接公選制は地方レベルの政治参加を促すために2000年にブレア労働党政権が導入を可能とした[6]。
市長の任期はロンドンの場合は6年である。
ヨーロッパでは国政職と地方職の兼任を認めている国が多いが、イギリスでは国政職と地方職の兼職は伝統的に好まれず、国政職と地方職を兼任していた人物も稀でキャリアの点でも分離される傾向がみられる[7]。稀な例としてアトリー内閣で内相を務めたH・モリソン(旧ロンドン市議)がいるが「タマニー型のボス」(タマニーは18世紀末に市政の私物化で批判されたニューヨークの政治団体の名前)としてその政治姿勢が非難された[7]。
イタリア
イタリアのコムーネには合議体の理事会(giunta)が設置されており、執行部に市長の個性が現れる度合いは小さい[8]。
イタリアでは政党の力が強く、市政も市長の個性が現れにくい機構であるため、市長が国政進出時にそのキャリアを買われることは特になく、政党内でのキャリアのほうが重視される傾向にある[8]。イタリアの下院議員は何らかの地方職を兼任していることが多いが、1960年代に大都市の市長などと国会議員の兼職は禁じられた[8]。
フランス
フランスでは選挙法によって国政職と地方職の兼任が認められている[8]。下院議員の大多数は市町村長・助役・県議会議員などを兼職しており、中には4つや5つの地方職を兼任している下院議員もいる[8]。フランスは中央集権的国家とされているが、政党の力が弱く、地方職は政治家個人の政治キャリアにとって重要とされている[8]。
脚注
^ 議会と違い、その市町村民でなくても被選挙権を行使することは可能(公職選挙法第10条第6号)。
^ 法的には、当該自治体が資本金の二分の一以上を出資している法人(地方自治法施行令第122条)とされる。
^ 例えば議会、行政委員会など
^ 地方自治法第177条第1項および同条第2項により、「非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費」を議会が削除し又は減額する議決をしたときは市町村長は理由を示してこれを再議に付さなければならず、再議に付してもなお議会が当該経費を削除し又は減額する議決をしたときは市町村長は地方自治法第177条第4項によりその議決を不信任の議決と見なすことができる。不信任の議決と見なす場合には市町村長は議会から予算の送付を受けてから10日以内に議会を解散する(全国都道府県議会議長会事務局内地方議会議員大事典編纂委員会『地方議会議員大事典』第一法規出版p280)。
^ つまり、市町村長が議会を解散できるのは議会から不信任の議決を受けた場合(地方自治法第178条)と不信任の議決を受けたと見なせる場合(地方自治法第177条第4項)に限られ、この要件を満たさない市町村長の議会解散権の行使は無効とされる(仙台高裁昭和23年10月25日判決(『地方議会議員大事典』p542))。
^ 下楠昌哉 編『イギリス文化入門』三修社、2000年、310頁- ^ ab岩崎正洋 編『民主主義の国際比較』一藝社、2000年、109頁
- ^ abcdef岩崎正洋 編『民主主義の国際比較』一藝社、2000年、111頁
関連項目
- 多選
- 市町村に置かれる他の執行機関
- 監査委員
- 農業委員会
- 教育委員会
- など。行政委員会#地方公共団体に設置される行政委員会の一覧も参照。
外部リンク
- 地方自治法
- 全国市長会
- 全国町村会
- 東京都公文書館