執事 (キリスト教)
本項ではキリスト教における執事(しつじ)を扱う。
使徒行伝6章に登場する、共同体の雑用のための職の訳語としての用法のほか、現代のキリスト教の教会における職位・役割も指すが、教会(教派)によって語義・指す職に違いがある。
目次
1 教会(教派)ごとの比較対照
2 聖公会・プロテスタントにおける執事
2.1 聖公会
2.2 プロテスタント
2.2.1 長老制教会
2.2.2 会衆制教会
2.2.3 特殊な例
3 正教会
4 脚注
5 関連項目
教会(教派)ごとの比較対照
西方教会
カトリック教会では助祭に相当する。
聖公会、プロテスタントにおける執事は、ラテン語では diaconus といい、使徒言行録6章に記された、初代教会において使徒らを「食事の世話」などの共同体の雑用から解放し宣教に専念させるために置かれた職位を継承するものとされる。監督制の聖公会と、長老制の改革派・長老派教会では、共通の訳語を用いているだけといっていいほどその理解が異なる。会衆制の教会では、一部の専門職をのぞき全ての役員を執事と呼ぶ。
聖公会においては位階のうちで司祭の補佐を務める聖職位。
長老制の教会(改革派教会、長老派教会など)においては会計と福祉を担当する信徒職。
会衆制の教会において教会(神と教会員)に仕える者を意味する信徒職。(牧師も信徒の一員とされるため、広義では執事)
東方教会
正教会での「執事」は他教派における教会役員に相当。奉神礼上の役割は輔祭が継承している。
呼称と職名の教派別対応表 | ||||
教派 | プロテスタント | 聖公会 | カトリック教会 | 正教会 |
希: Διάκονος 英: deacon | 執事 | 執事 | 助祭 | 輔祭 正教会の執事は他教派の教会役員に相当 |
聖公会・プロテスタントにおける執事
宗教改革においてジャン・カルヴァンが教会の職制の一つとして執事職を認め、聖公会もこれを置いている。[1][2][3]
聖公会
職制理解はカトリックの助祭に近い。主教の聖職者按手によって職位が与えられる。聖餐式を執行することが出来ない。ただし、主教の許可があれば分餐を行なうことはできる。礼拝時の服装は司祭とよく似るが、ストール(ストラ)を左肩から斜めにかけているので、見分けが付く。
プロテスタント
長老制教会
カルヴァンの提唱した教会の四職(牧師、神学教師、長老、執事)の一。教会会計、聖餐準備奉仕および互助・福祉などの分配を担当する。治会長老と同様に信徒職であり、教職位ではない。宗教改革の理解では、これは新設された職位ではなく、ローマの聖職階位制に変質してしまった初代教会の制度を聖書に基づき正しく復元したものとされる。
会衆制教会
万人祭司主義のため、役員もあくまでも役職であり特別な職種ではない。そのため他の教派で言う監督や長老といった役職もひっくるめて教会に仕える者。すなわち執事としている。ほとんどの教会では、教会員の選挙で決まり任期がある。
特殊な例
日本ルーテル教団では、執事は牧師とともに教職者として位置づけられる。教会の委託と責任教職の監督の下で、礼拝説教と聖礼典の執行も認められる。宣教母体であった米国の教会(The Lutheran Church—Missouri Synod)が女性の牧師職を認めていない中で、日本ルーテル教団は女性の教職を認めているが、米国の教会との関係悪化を避けるために、「牧師」ではなく「執事」として任用している。執事は、原則、地域教会の責任教職になることはできないが、地区教会会議が認める場合はこの限りではない。地域教会が招聘することはできず、地区教会会議と教団が招聘できる。
正教会
正教会では、聖職者ではない一般信徒で教会の運営に関わる役員を「執事」と呼ぶ。正教会ではギリシャ語でΔιάκονος(ディアコノス)と呼ばれる職は輔祭に引き継がれた[4]。
すなわち、カトリック教会の助祭と聖公会の執事が正教会の輔祭に相当し、他教派の教会役員が正教会の執事に相当する。
輔祭は、奉神礼(礼拝)に際してはステハリとオラリ、およびポルーチを着用する。
脚注
^ ジャン・カルヴァン『キリスト教綱要』
^ ヘンリー・シーセン『組織神学』聖書図書刊行会
^ 岡田稔『岡田稔著作集』いのちのことば社
^ かたち-聖職者と修道士:日本正教会 The Orthodox Church in Japan
関連項目
- 名誉執事