春日大社
春日大社 | |
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中門・御廊(重要文化財) | |
所在地 | 奈良県奈良市春日野町160 |
位置 | 北緯34度40分53秒 東経135度50分54秒座標: 北緯34度40分53秒 東経135度50分54秒 |
主祭神 | 春日神 (武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神の総称) |
神体 | 御蓋山(神体山) |
社格等 | 式内社(名神大) 二十二社(上七社) 旧官幣大社 勅祭社 別表神社 |
創建 | 神護景雲2年(768年) |
本殿の様式 | 春日造 |
札所等 | 神仏霊場巡拝の道第15番(奈良第2番) |
例祭 | 3月13日(春日祭) |
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春日大社(かすがたいしゃ)は、中臣氏(のちの藤原氏)の氏神を祀るために768年に創設された奈良県奈良市にある神社。旧称は春日神社。式内社(名神大社)、二十二社(上七社)の一社。旧社格は官幣大社で、現在は神社本庁の別表神社。神紋は「下がり藤」。
全国に約1000社ある春日神社の総本社である。武甕槌命が白鹿に乗ってきたとされることから、鹿を神使とする。ユネスコの世界遺産に「古都奈良の文化財」の1つとして登録されている。
目次
1 祭神
2 歴史
3 境内
4 摂末社
5 主な祭事
6 文化財
6.1 国宝
6.2 重要文化財(国指定)
6.3 重要無形民俗文化財(国指定)
6.4 天然記念物(国指定)
6.5 史跡(国指定)
6.6 その他
7 現地情報
8 脚注
9 関連図書
10 関連項目
11 外部リンク
祭神
主祭神は以下の4柱。総称して春日神と呼ばれ、藤原氏の氏神である。
武甕槌命 - 藤原氏守護神(常陸国鹿島の神)
経津主命 - 同上(下総国香取の神)
天児屋根命 - 藤原氏の祖神(河内国平岡の神)
比売神 - 天児屋根命の妻(同上)
歴史
奈良・平城京に遷都された710年(和銅3年)、藤原不比等が藤原氏の氏神である鹿島神(武甕槌命)を春日の御蓋山(みかさやま)に遷して祀り、春日神と称したのに始まる[要出典]とする説もあるが、社伝では、768年(神護景雲2年)に藤原永手が鹿島の武甕槌命、香取の経津主命と、枚岡神社に祀られていた天児屋根命・比売神を併せ、御蓋山の麓の四殿の社殿を造営したのをもって創祀としている。ただし、近年の境内の発掘調査により、神護景雲以前よりこの地で祭祀が行われていた可能性も出てきている。
藤原氏の隆盛とともに当社も隆盛した。平安時代初期には官祭が行われるようになった。当社の例祭である春日祭は、賀茂神社の葵祭、石清水八幡宮の石清水祭とともに三勅祭の一つとされる。850年(嘉祥3年)には武甕槌命・経津主命が、940年(天慶3年)には、朝廷から天児屋根命が最高位である正一位の神階を授かった。『延喜式神名帳』には「大和国添上郡 春日祭神四座」と記載され、名神大社に列し、月次・新嘗の幣帛に預ると記されている。
藤原氏の氏神・氏寺の関係から興福寺との関係が深く、813年(弘仁4年)、藤原冬嗣が興福寺南円堂を建立した際、その本尊の不空羂索観音が、当社の祭神・武甕槌命の本地仏とされた。神仏習合が進むにつれ、春日大社と興福寺は一体のものとなっていった。11世紀末から興福寺衆徒らによる強訴がたびたび行われるようになったが、その手段として、春日大社の神霊を移した榊の木(神木)を奉じて上洛する「神木動座」があった。
1871年(明治4年)に春日神社に改称するとともに官幣大社に列し「官幣大社春日神社」となった。1946年(昭和21年)12月、近代社格制度の廃止に伴い、そのままでは単に「春日神社」となって他の多くの春日神社と混同することを避けるために現在の「春日大社」に改称した。
1998年(平成10年)にユネスコの世界遺産(文化遺産)に「古都奈良の文化財」の1つとして登録された。
創建以来ほぼ20年に一度、本殿の位置を変えずに建て替えもしくは修復を行い御神宝の新調を行う「式年造替」を行ってきており、最近では2015年(平成27年)から2016年(平成28年)にかけて第60次式年造替が行われた[1]。
境内
本殿は春日造で4棟並んで立っており、第一殿に武甕槌命、第二殿に経津主命、第三殿に天児屋根命、第四殿に比売神が祀られている。拝殿はなく、一般の参拝者は幣殿の前にて、初穂料を納めて特別拝観を申し込んだ場合は本殿前の中門から参拝することになる。
参道の石燈籠
車舎
着到殿
南門
幣殿・舞殿
幣殿・舞殿と直会殿
西回廊と直会殿
酒殿
竃殿
宝庫
宝物殿(当時、現国宝殿)
銘木 砂ずりの藤
摂末社
広大な境内には多数の摂末社がある。以下に挙げるのは代表的なもの。
若宮神社- 祭神:天押雲根命(比売神の御子神)
- 本殿の南東側に所在。
- 十二社
- 若宮神社・夫婦大国社を始めとし、本殿南東側に所在。「福の神十二社めぐり」として古来より崇敬を集める
榎本神社- 祭神:猿田彦大神 - 祭神は当地の地主神であり、元々この地で祀られていた神であるとされる。中世までは巨勢姫明神とされていた
式内社。本殿廻廊の西南隅に所在。
- 祓戸神社
- 祭神:瀬織津姫
- 祭神:瀬織津姫
- 二之鳥居横に所在。参拝者はここでまず身を清めてから参拝するのが習わしとなっている。『南安曇郡誌』の記述などから、本殿第四殿に祀られている比売神とは、もともとは瀬織津姫のことであったとする説もある
- 一言主神社
- 祭神:一言主大神
- 祭神:一言主大神
- 本殿の北西側に所在。平安時代初期に興福寺境内に創建されたものを遷す
- 金龍神社
- 祭神:金龍大神
- 本殿の南東側に所在。後醍醐天皇ゆかりの神社であり、「禁裡殿」とも呼ばれる
若宮神社
祓戸神社
一言主神社
金龍神社
主な祭事
- 毎月1日・11日・21日 旬祭
- 1月
- 3日 神楽始式
- 7日 御祈祷始式
- 10日 舞楽始式
- 2月
節分の日 節分万燈籠
- 3月
- 13日 春日祭(例祭)
- 15日 御田植祭(御田植神事)
- 4月
- 3日 ひと雛まつり
- 5日 水谷神社鎮花祭
- 5月
- 5日 菖蒲祭(端午の節供祭)
- 10日 献茶祭
- 11日-12日 薪御能
- 6月
- 30日 夏越大祓式
- 8月
- 14日-15日 中元万燈籠
- 9月
中秋の名月の日・旧暦8月15日 采女祭
- 10月
- 9日 重陽節供祭・献香祭
- 11月
- 3日 文化の日舞楽演奏会
- 12月
- 15日-18日 春日若宮おん祭
- 31日 年越大祓式
- 15日-18日 春日若宮おん祭
- 20年に一度 式年造替(第60次式年造替は2015年 - 2016年)
文化財
春日大社は平安時代に奉納された貴重な刀剣・甲冑・美術工芸品などの国宝、重要文化財を含んだ多数の文化財を所蔵することから「平安の正倉院」と呼称されている[2]。これらの文化財の一部は2016年10月に新装開館した「春日大社国宝殿」(旧称春日大社宝物殿)で鑑賞することができる[3][4]。
2016年(平成28年)度から、1939年(昭和14年)に宝庫の天井裏から発見された12本の太刀を順次研ぎ直し始めた結果、複数の太刀が国宝・重文級の貴重な文化財であることが判明しており、研ぎ直された貴重な太刀は報道発表に続いて国宝殿で順次公開されている。2016年12月には、延寿国吉作の1本と北条時村が奉納したとみられる平安末から鎌倉初期の無銘の「古備前物」2本が報道陣に公開された[5][6]。2018年(平成30年)1月には、4番目に研ぎ直された黒漆山金作太刀(くろうるしやまがねづくりたち)が報道陣に公開された。この太刀は1942年に重要美術品に認定されていたもので[7]、研磨の結果、平安時代後期の「古伯耆」(こほうき、現在の鳥取県で製作された刀剣)とみられ、刀身に反りのある日本刀としては最古級の安綱作の可能性もあるという[8][9]。
国宝
- 建造物
- 本社 本殿 4棟(附:透塀、内鳥居、瑞垣)
- 美術工芸品
- 金地螺鈿毛抜形太刀
- 沃懸地(いかけじ)獅子文毛抜形太刀 中身無銘
- 沃懸地酢漿平文(いかけじかたばみひょうもん)兵庫鎖太刀 中身無銘
- 沃懸地酢漿紋兵庫鎖太刀 中身無銘
- 金装花押散兵庫鎖太刀 中身無銘
- 菱作打刀 中身無銘(附 杉箱)
- 赤糸威鎧 兜、大袖付(梅鶯金物)
- 赤糸威鎧 兜、大袖付(竹虎雀金物)
- 黒韋威矢筈札胴丸(くろかわおどしやはずざねどうまる) 兜、大袖付[10])
- 黒韋威胴丸 兜・大袖付[11]
- 籠手
- 本宮御料古神宝類(明細は後出)
- 若宮御料古神宝類(明細は後出)
「本宮御料古神宝類」の明細
- 金銀幣 2枚
- 蒔絵筝 1張
- 梓弓 38張
- 槻弓 16張
- 雑木弓 14張
- 白葛胡籙残闕 3具分
- 黒塗矢(内20隻鏃欠失)91隻
- 鏑矢 4隻
- 木造彩色矢 5隻
- 細身鉄鉾(内7本石突欠失)13本
- 平身鉄鉾(内3本石突欠失)12本
- 木鉾(内2本穂折損)38本
- 鉾柄 3本
- 鉾身 1枚
- 紫檀螺鈿餝劔 1口
- 黒漆平文餝劔(柄白鮫)4口
- 黒漆平文餝劔(柄銀打鮫)5口
- 黒漆平文餝劔(柄欠失)1口
- 黒漆平文太刀 1口
- 平緒残闕 2筋分
- 組紐残闕 1筋分
- 黒漆平文笥(蓋欠失)1口
- 黒漆平文根古志形鏡台 1基
- 黒漆平文鏡台 1基
- 黒漆彩文麻笥 1口
- 黒漆平文線柱 1基
- 白葛箱残闕 1合
- 木彫黒漆彩色太刀 4口
- 黒漆刀子 1口
- 黒漆平文唐櫛笥及台 1具
- 黒漆平文唐櫛笥台 1基
- 木笏及黒漆平文笏箱 1具
- 黒漆平文笏箱残闕 1合分
- 緑地彩絵琴箱 1合
- 青瑠璃壺残闕及金銅蓋 1合分
- 神宝附属残闕類(花形、鈴、木軸、総角)一括
「若宮御料古神宝類」の明細
- 蒔絵弓 1張
- 平胡籙 1具 矢配板に大治六年正月二日の墨書がある
- 水晶鏑矢 7隻 黒漆沃懸地斑箟金銅雁俣鏃付
- 金銅尖矢 23隻 黒漆沃懸地斑箟(内3隻鏃欠失)
(以上保延二年十一月七日藤原頼長献進)
- 蒔絵弓 1張
- 黒漆平文鉾 1本
- 毛抜形太刀 1口
- 黒漆平文飾劔(柄欠失)1口
- 笙 1管
- 和琴 1張
- 銅狛犬 1躯
- 白磁獅子 1躯
- 木造彩色磯形残闕 1基
- 木造彩色磯形残闕 2基
- 金鶴及銀樹枝 1具
- 銀樹枝 1本
- 銀鶴及磯形 1対
- 銀鶴 1箇
- 銀琴 1張
- 水晶珠 1顆
「若宮御料古神宝類」のうち、毛抜形太刀、黒漆平文飾劔(柄欠失)、笙、和琴は2001年に追加指定(平成13年6月22日文部科学省告示第116号)、6行目の蒔絵弓と黒漆平文鉾は2007年に追加指定(平成19年6月8日文部科学省告示第94号)。
重要文化財(国指定)
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典拠:2000年(平成12年)までに指定の国宝・重要文化財の名称は、『国宝・重要文化財大全 別巻』(所有者別総合目録・名称総索引・統計資料)(毎日新聞社、2000)による。
重要無形民俗文化財(国指定)
春日若宮おん祭の神事芸能(春日若宮おん祭保存会)
天然記念物(国指定)
- 特別天然記念物
- 春日山原始林
- 天然記念物
- 春日神社境内ナギ樹林
- 奈良公園及びその周辺で生息するシカ(ニホンジカ)(財団法人奈良の鹿愛護会)
史跡(国指定)
- 国の史跡 「春日大社境内」
その他
- 選択無形民俗文化財 「春日若宮おん祭の芸能」(春日古楽保存会)
世界文化遺産 「古都奈良の文化財」
現地情報
- 所在地
奈良県奈良市春日野町160
- 交通アクセス
- 鉄道
近鉄奈良線 近鉄奈良駅およびJR西日本関西本線・桜井線 奈良駅から奈良交通バスの「春日大社本殿」行きで終点「春日大社本殿」下車すぐ。- 奈良交通バス(市内循環外回り)で「春日大社表参道」下車、徒歩約10分。
- 近鉄奈良駅から徒歩25分。JR奈良駅から三条通りを東へ徒歩35分。
- 周辺
- 奈良国立博物館
- 新薬師寺
- 奈良公園
- 志賀直哉旧居
脚注
^ 春日大社 第六十次 式年造替記念 奉祝行事実行委員会
^ 春日大社公式サイトには「国宝352点、重要文化財971点」を収蔵する旨の記載があるが、これは「古神宝類」等の一括指定物件を一点一点かぞえた場合の数字である。春日大社所有の国宝は、指定の「件数」としては建造物1件(4棟)、美術工芸品13件であり、本記事の「文化財」節には春日大社所有の国宝・重要文化財全件が漏れなく記載されている。
^ 春日大社 国宝殿
^ 「平安の正倉院」が国宝殿を公開 奈良・春日大社 朝日新聞 2016年9月29日
^ 春日大社に鎌倉期の名刀 延寿国吉作、さび落とし判明 奈良 産経ニュース 2016年12月31日
^ 春日大社 名刀3本新たに確認 国宝殿で一般公開 奈良/奈良 毎日新聞 2016年12月30日
^ 昭和17年5月30日文部省告示第499号(参照:国立国会図書館デジタルコレクション)
^ 最古級の日本刀、なぜ天井裏に?春日大社、80年前発見 朝日新聞 2018年1月22日
^ 春日大社 最古級の日本刀「古伯耆物」平安時代末期 毎日新聞 2018年1月23日
^ 2013年に修理が完了した。(参照:春日大社:楠木正成の甲冑、修理終わり公開:毎日新聞2013年3月29日)
^ 平成28年8月17日文部科学省告示第111号。
^ 「鼉」(だ)は、「口」を横に2つ並べ、その下に「田」「一」「黽」。
^ 寛政3年(1791年)の火災で焼けた甲冑の金属部分のみが残ったもの。以下2件も同様。
^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄三十六間四方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄二十四間四方白星兜鉢」の名称で展示されていた。「○○間」とは、兜の表面の「筋」(すじ)の数をかぞえたものであり、「四方白」とは、兜の前後左右4方向に鍍金銀の板を伏せたものの意である。鍍金銀の板で覆われた部分の「筋」の数をかぞえるか否かによって、間数の差が生じる。以下2件の兜についても同様である。
^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄十八間二方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄十六間二方白星兜鉢」の名称で展示されていた。これらの名称の差異については前項の脚注を参照。
^ 兜の名称は、重要文化財指定名称では「鉄二十八間四方白星兜鉢」であるが、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 春日大社 千年の至宝」では、「鉄二十四間四方白星兜鉢」の名称で展示されていた。これらの名称の差異については前々項の脚注を参照。- ^ ab平成28年8月17日文部科学省告示第116号。
関連図書
- 安津素彦・梅田義彦編集兼監修者『神道辞典』神社新報社、1968年、20頁
白井永二・土岐昌訓編集『神社辞典』東京堂出版、1979年、93頁
菅田正昭『日本の神社を知る「事典」』日本文芸社、1989年、169-172頁- 上山春平他『日本「神社」総覧』新人物往来社、1992年、210-211頁
- 『神道の本』学研、1992年、208頁
関連項目
- 古都奈良の文化財
- 国宝一覧
- 興福寺
- 春日神木
- 春日大社五重塔
- 春日移し
- 影向の松
- 八乙女
カスガマイシン - 春日大社の土壌サンプルより発見されたことから命名された抗生物質
外部リンク
春日大社(公式サイト)- 奈良ネットホームページ
春日若宮おん祭の深い歴史とその魅力-西山厚(奈良国立博物館学芸部長)
春日祭神四座(國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」)- 春日大社萬葉植物園
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