シェルピンスキーのギャスケット
シェルピンスキーのギャスケット(英: Sierpinski gasket、波: uszczelka Sierpińskiego)はフラクタル図形の1種であり、自己相似的な無数の三角形からなる図形である。ポーランドの数学者ヴァツワフ・シェルピンスキにちなんで名づけられた。シェルピンスキーのガスケット、シェルピンスキーの三角形(波: trójkąt Sierpińskiego、英: Sierpinski triangle)、シェルピンスキーのざる(英: Sierpinski sieve)とも呼ばれる。
シェルピンスキーのギャスケットはフラクタル図形であるため、正確に作図することは不可能だが、以下の手順を繰り返すことで、近似的な図形を作図できる。なお、繰り返し回数を増やすことにより、望む処まで近似のレベルを高められる。
- 1辺の長さが1の正三角形の各辺の中点を互いに結ぶと、中心部に1辺の長さが 1/2 の正三角形ができる。
- この1辺の長さが 1/2 の正三角形を切り取る。
- これによって、1辺の長さが 1/2 の正三角形が3個残る。
- さらに、これら3つの正三角形の各辺の中点を互いに結んで出来た長さが 1/4 の正三角形を切り取る。
- これによって1辺の長さが 1/4 の正三角形が9個残る。
- 同様に手順をくりかえすと、n 回目には長さ (1/2)n の正三角形を切り取り、長さ (1/2)n の正三角形が 3n 個残る。
上記の手順において n → ∞ とした極限がシェルピンスキーのギャスケットである。
ハウスドルフ次元は log 3/log 2 (≈ 1.5850…) であり、1次元と2次元の間の値をとる。
この図形は有限の面積の中に無限の長さを包含している。シェルピンスキーのギャスケットを3次元化した場合、表面積は一定で、ハウスドルフ次元は2である。この場合、空洞部に該当する立体は正三角形を8面、有する正八面体である[1]。これはフラクタル図形の特徴の1つであり、現実の例えば人体における血管の分岐構造や腸の内壁がフラクタルであることの理由の1つであろうと考えられている。
シェルピンスキーのギャスケットは、以下のような方法でも作れる。
2n 行のパスカルの三角形を、奇数を黒、偶数を白で塗り分けると[注 1]、シェルピンスキーのギャスケットを近似できる。正確には、この図形の n → ∞ の極限がシェルピンスキーのギャスケットである[2]。- 1次元のセル・オートマトンの内、ルール90と呼ばれるものは、シェルピンスキーのギャスケットを生成する。
同様のフラクタル図形の例として、0次元と1次元の間の値をとる「カントール集合」(0.6309…次元)や、2次元と3次元の間の値をとる「メンガーのスポンジ」(2.7268…次元)などがある。
注釈
^ あるいは位数2の有限体 F2 によるパスカルの三角形でもよい。
脚注
^ Wolfram Demonstrations Project(英語) 2013年3月19日閲覧。
^ Stewart, Ian (2006), How to Cut a Cake: And other mathematical conundrums, Oxford University Press, p. 145, ISBN 9780191500718, http://books.google.com/books?id=theofRmeg0oC&pg=PT145 .
関連項目
- シェルピンスキーのカーペット
- メンガーのスポンジ
- 反復関数系
- カオスゲーム
- フラクタル
- 三つ鱗
- パスカルの三角形
- p-進量子力学
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