鰓尾類


鰓尾類

Argulus foliaceus 2.jpg
Argulus foliaceus


分類





















:

動物界 Animalia


:

節足動物門 Arthropoda

亜門
:

甲殻亜門 Crustacea

上綱
:

オリゴストラカ上綱 Oligostraca


:

イクチオストラカ綱 Ichthyostraca

亜綱
:
鰓尾亜綱 Branchiura



  • チョウ目 Arguloida

鰓尾類(さいびるい)は、甲殻類に含まれる小動物の一群である。主として魚類の外部寄生虫である。日本ではチョウが普通種で、別名のウオジラミとしても知られる。




目次





  • 1 概説


  • 2 形態


  • 3 内部構造


  • 4 習性


  • 5 生活史

    • 5.1 類似するもの



  • 6 利害


  • 7 系統


  • 8 分類


  • 9 参考文献


  • 10 脚注




概説


鰓尾類は、特殊な構造をした甲殻類の群である。円盤のような偏平な体に独特の吸盤を持ち、魚類の体表に吸着してその体液を吸う外部寄生虫である。しかししっかりした遊泳脚を持ち、よく泳ぐことができる。体型が独特で類縁関係がはっきりしない。



形態


小型の動物で、多くは数mmから1cm前後だが、ウミチョウは3cm程になる。


全身はほぼ円盤型。その大部分は頭部と第一胸節が癒合したものが大きく広がって形成された背甲であり、これを盾甲ということもある。背面中央から後方には狭い幅で胸部から腹部の体節が見分けられる。附属肢などはすべてこの背甲の下に隠れている。裏面から見ると、中程より前の左右に大きな吸盤があり、中程より後方中央には細長い胴があって鰓足が並んでいる。


頭部の背面では、正中線上にノープリウス眼があり、それより前方に一対の複眼がある。腹面では、先端近くにごく短い第一、第二触角が互いに接近して着いている。いずれもその基部が鉤状になっており、これで魚の体表にしがみつく。中ほどの両側には円形の大きな吸盤がある。これは第一小顎が変化したものである。なお、Dolopsは吸盤ではなく鉤を持つ。口は吸盤の間にあり、刺針と吻をそなえる。吻は上唇と下唇の変形と見られる。


吸盤の後方には第二小顎があり、これはやや歩脚状。これに続く胴体は円筒形で、四節にそれぞれ一対の附属肢を備える。附属肢はいずれも遊泳に用いられ、短い基部の上に鞭状の二枝を持ち、前の二対ではその枝の基部からさらに鞭状の枝を出す。雄ではこれらの基部に交尾用の補助器官が発達する。第二小顎の体節とこれらの附属肢の出る体節が胸部である。


胸部に続く腹部はごく短く、後端が二つに割れて全体に偏平な尾節となる。後端の切れ目に肛門が開くほか、退化的ながら附属肢もある。


なお、雌雄異体である。雄は雌より小さく、胸部がより大きい。



内部構造


消化管は胃が左右に分枝し、その先端はさらに細かく分かれる。精巣及び卵巣や貯精嚢は胸部にあり、生殖孔は第四胸節の腹面後端にある。



習性


魚類やカエル類などの体表に吸着してそこに傷をつけ、体液を吸う。時に体表を離れて遊泳する。数日間は餌を取らないでも生存するらしい。体表に張り付いている様子は、やや透明ですべすべしているので、鱗の1枚のようにも見える。そのため、数が少ない場合は見逃しやすい。


大部分は淡水産で、一部に海産種がある。



生活史


産卵時には宿主を離れ、水中の石の表面などにゼラチン質で包まれた卵を付着させる。孵化した幼生は外見的には親に似ているが、より胸部と腹部が目立つ。はっきりと異なるのは、初期の幼生の第一、第二触角が遊泳用に発達していること、第一小顎が鉤状を呈することである。この幼生をコペポディド幼生と言い、ややノープリウスに近い体制と見られる。この幼生は水面に出てそこで宿主に出会うと体液を吸いはじめ、次に脱皮すると第一、第二触角と第一小顎は短縮し、胸脚が遊泳用に発達する。



類似するもの


チョウの別名にウオジラミがあるが、この名はカイアシ類の寄生性のもの(ウオジラミ目)に使われているため、混同される可能性がある。さらに面白いのは、ウオジラミ目のウオジラミ科などのものにチョウと同様に頭胸部が円盤型に広がったものがあることで、そのためにこれらは外見上もよく似た姿となる。ただしウオジラミ目のものは自由に泳げないので、区別は簡単である。


また、等脚目にもウオノコバンなど、魚類に外部寄生するものがあり、これがウオジラミ呼ばわりされる例もある。こちらは形の上では類似性がない。



利害


魚類の寄生虫であるから、養魚場等において大きな被害をもたらす場合がある。これによって引き起こされる症状をウオジラミ症と言う。体表に血走ったような跡が出るのが普通である。体液を吸って魚を弱らせるだけでなく、傷口からミズカビ類が侵入することがあり、ミズカビ病の引き金となる。日本ではチョウがキンギョやコイなどの有力な害虫として知られる。




寄生の様子


また、これらの魚の人為的な移動に伴って、この類もその分布を拡大している例があり、問題視されている。日本ではチョウモドキはヨーロッパよりの移入種と考えられている。



系統


さまざまな特徴から甲殻類であることは間違いないが、その内部での関係についてはよく分からないところが多い。かつてはカイアシ類に含めたこともあるが、この類のみを鰓尾亜綱として他の類と分けるのが普通である。現在では甲殻亜門にイクチオストラカ綱[1][2]を認め、この下に置く。


他方で、節足動物に近い別群と考えられていたシタムシ類が、実はこの群にごく近いものではないかとの説が浮上し、これについては次第に受け入れられている。



分類


現生種は約100種、すべてを単一の目チョウ目(Branchura 鰓尾目とも)にまとめる。3属ほどが認められ、すべてを単一の科に纏めるか、2科に分ける。



  • Argulus :チョウ属

    • A. japonicus(チョウ)・A. cregoni(チョウモドキ)・A. scutiformis(ウミチョウ)

  • Chonopeltis

  • Dipteripeltis


  • Dolops:吸盤の代わりに鉤を持つ


参考文献





  • 石川良輔編『節足動物の多様性と系統』, (2008), バイオディバーシティ・シリーズ6 (裳華房)

  • 上野益三, 『日本淡水生物学』, 1973, 図鑑の北隆館

  • 岡田要, 『新日本動物図鑑』, 1976, 図鑑の北隆館


脚注




  1. ^ Regier, J. C.; Shultz, J. W.; Zwick, A.; Hussey, A.; Ball, B.; Wetzer, R.; Martin, J. W.; Cunningham, C. W. (2010). Arthropod relationships revealed by phylogenomic analysis of nuclear protein-coding sequences. Nature. 463(7284): 1079-1083. DOI: 10.1038/nature08742


  2. ^ Oakley, T.H., J.M. Wolfe, A.R. Lindgren & A.K. Zaharoff (2013). Phylotranscriptomics to bring the understudied into the fold: Monophyletic Ostracoda, fossil placement, and pancrustacean phylogeny. Molecular Biology And Evolution 30(1):215-233. DOI: 10.1093/molbev/mss216








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