レディースコミック
レディースコミックとは、日本における漫画のジャンルの一つ。本来的には20代以上の女性を読者対象として想定する漫画ジャンルで女性漫画のことである。現在の俗語表現としては女性を対象として想定する過激な性描写を含む漫画(成人向け扱いの場合もある)を表す。レディースコミックの略称としてレディコミがある。現在では、レディコミといえば本稿で解説の対象としている過激な性描写を含むものを指し、レディースコミックといえば性描写に力点がおかれていない女性漫画(ヤング・レディースを含む)を指すことが多い。[1]
目次
1 概要
2 主なレディースコミック誌
3 主な漫画家
4 脚注
5 参考文献
6 関連項目
概要
レディースコミックの元祖は1979年創刊の『Be in LOVE』(講談社)であるとされる[1]。
1981年にはFor Lady(小学館)が創刊されるなど、1980年代前半くらいに、少女漫画の読者層よりも上の年齢を対象とする女性漫画が急拡大してジャンルとして定着した[2]。その中で文芸的に評価される作品も生まれる一方、性描写を主眼とする作品が1980年代後半から現れはじめた。
1980年代のレディースコミックの大半は物語の中で性行為自体は行われていても、具体的な描写は伴わずに前後だけを描いてほのめかすだけのものが多かったが、それまで少女漫画を発行したことのない出版社(女性週刊誌や成人漫画を発行していた出版社が多い)も参入し、大手出版社からの雑誌と差別化するため性描写を激化させた。それにより、男性雑誌がレディースコミックを「過激な性描写を含む女性向けの漫画誌がある」と過剰な取り上げ方をした結果、そのようなイメージを排斥するため大手出版社の雑誌は性描写をなるべく行わない方向に舵をきった反面、性描写を売りにしていた雑誌は積極的にポルノとしての面を強調するようになり、それが現在の(過激な性描写を含む女性向け漫画という意味での)レディコミの流れとなった。[3]
上記の過程で内容が二極化した頃には、表紙が写真のものは性的なもの、漫画家のイラストのものはソフトなものという棲み分けも見られた。そうした過渡期を経て、現在では別個のジャンルとして確立している。女性漫画でも性描写自体はそれほど珍しい物ではないが、男女性器の直接描写の有無によって両者は区別される。
本来は少女漫画の読者層より上の世代の為の女性漫画であったものが、性描写の過激さが行き詰まり、このジャンル自体が早々に閉塞してしまったとされる[4]。なお、大人の女性向け漫画である本ジャンルと少女漫画の間を埋める大人の女性向け少女漫画として、1990年代にヤング・レディースというジャンルが生まれている。
レディコミでは作中の女性人物が、強姦されたり緊縛されるなどマゾヒスティックな立場におかれることが多いが、漫画評論家の藤本由香里によれば「女性が自分から異性を求めるのははしたない」という規範が存在するため、男性に強制されるという形で性行為を描く必要があるという[5]。
また、レディコミ専門の編集プロダクションも存在している。
主なレディースコミック誌
- コミックアムール(サン出版)
- タブー(三和出版)
- 愛の体験specialデラックス(竹書房)
- 微熱(笠倉出版社)
- Special Aya(宙出版)
- 恋愛白書スタート!(宙出版)
- 恋愛美人イフ(笠倉出版社)
- 恋愛体験(バナジー出版)
恋愛楽園ピュア(徳間書店)
恋愛LoveMAX(秋田書店)- 恋愛キス(ラブキス)(笠倉出版社)
表紙には実写の写真が使われ、イラストが使われるティーンズラブとは対照的である[6]。モデルとして白人の女性が使われることちが多く、これは読者が「生々しさ」をあまり感じなくてすむような効果があるのではないかと指摘されることがある[7]。ただし2000年代に創刊された顔ぶれではイラストが表紙をかざっており、全てがそうだと言えるわけではない。
価格は1990年代は300円程度であったが、ゼロ年代には平均600円前後に高騰している[8]。
1990年代後半には、より若い年代の読者を想定したティーンズラブも流行し、Young Love Comic aya (宙出版)などのように当初レディコミとして発刊されていたものが、ティーンズラブと化したものもある。
主な漫画家
- 井出智香恵
- 川崎三枝子
- さかもと未明
- 汐見朝子
- 葉月つや子
- 星合操
- 森園みるく
- もろおか紀美子
- 矢萩貴子
- 渡辺やよい
脚注
- ^ ab『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』106頁。
^ 『20世紀少女マンガ天国』(エンターブレイン)によれば、1981年創刊の『ビッグコミックフォアレディ』(小学館)によって一気に広がったとしている。
^ 『女はポルノを読む―女性の性欲とフェミニズム』79-81頁。
^ 『20世紀少女マンガ天国―懐かしの名作から最新ヒットまでこれ一冊で完全網羅!』エンターブレイン、2001年、ISBN 978-4-7577-0506-7
^ 藤本由香里 『快楽電流―女の、欲望の、かたち 』 河出書房新社、1999年、153頁。ISBN 978-4309242132。
^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』154頁。
^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』171-172頁。
^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』108頁。
参考文献
堀あきこ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』 臨川書店、2009年。ISBN 978-4653040187。
守如子 『女はポルノを読む―女性の性欲とフェミニズム』 青弓社、2010年。ISBN 978-4787233103。
関連項目
- 衿野未矢