ゲノムプロジェクト
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ゲノミクス Genomics |
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ゲノムプロジェクトとは、DNAシークエンシングによって生物のゲノムの全塩基配列を解読し、タンパク質コード領域やその他のゲノム領域のアノテーションをつけることを目的としたプロジェクト。当初はヒトをはじめ、マウスや線虫などのモデル生物が主な対象であったが、多くの生物種に対象は拡大している。各国の公的研究機関がチームを組んでプロジェクトを進行させるケースが多いが、イネや小麦などの主要農産物については企業による解読もなされた。
塩基配列情報は重要なものではあるが、それだけでは生物の理解には不十分であり、遺伝子領域や制御領域の認識、それらの役割の解明などを進めていくことが望まれる。これらの研究をポストゲノムと総称する。
目次
1 ゲノムアッセンブリング
2 ゲノムアノテーション
3 ゲノムプロジェクトとモデル生物の一覧
3.1 後生動物 Metazoa
3.2 植物 Plantae
3.3 菌類 Fungi
3.4 原生生物
3.5 細菌
3.6 古細菌
3.7 細胞内小器官
3.8 ウイルス
3.9 メタゲノム
4 脚注
5 関連項目
6 外部リンク
ゲノムアッセンブリング
ゲノムアッセンブリングとは、大量の短いDNA断片の配列を決定し、元となった染色体のDNA配列を構築しようとする過程である。配列アセンブリングなどとも呼ばれる。ショットガン・シークエンシング法によるプロジェクトでは、サンプルから得られたDNAは断片化されている。これら一つ一つの断片はリードと呼ばれ、シーケンサーにより配列決定される。得られたリードは、バイオインフォマティクス的なアルゴリズムによりオーバーラップする部分を探索しつなぎ合わせていく。
ゲノムアッセンブリングは非常に困難な技術的問題を抱えている。それはマイクロサテライトや、SINEs、LINEsといった繰り返し配列がゲノムには大量に含まれるためである。とりわけ、ゲノムサイズの大きい動植物ではこれらのリピートは数千塩基におよんだり、大量に散在している。
結果として得られるドラフト配列は、コンティグごとにまとめられ、領域ごとの情報とリンクさせるための足場となる。
ゲノムアノテーション
ゲノムアノテーションとは、配列に生物的な情報を注釈する過程である。
ゲノムプロジェクトとモデル生物の一覧
後生動物 Metazoa
節足動物 Arthropoda:
ネッタイシマカ(デング熱) Aedes aegypti
ヒトスジシマカ Aedes albopictus- Aedes triseriatus
マダニ Amblyomma americanum
ハマダラカ (マラリア) Anopheles gambiae: 2002年10月
ミツバチ Apis mellifera ligustica
カイコ Bombyx mori:2004年2月29日
アカイエカ Culex pipiens
キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster:BDGP, Celera, 2000年3月24日
ツェツェバエ (トリパノソーマ) Glossina morsitans
キョウソヤドリコバチ Nasonia vitripennis
脊索動物 Chordata:
ウシ Bos taurus: 進行中
イヌ Canis familiaris
ウマ Equus caballus: 進行中
ネコ Felis catus: 進行中
ヒト Homo sapiens
マウス Mus musculus:
チンパンジー Pan troglodytes
ラット Rattus norvegicus:2004年4月1日
イノシシ、ブタ Sus scrofa
ニワトリ Gallus gallus
アフリカツメガエル Xenopus laevis- アフリカツメガエル Xenopus tropicalis
メダカ Oryzias latipes: 700 Mbp, NIG、東京大学, 2007年
ゼブラフィッシュ Danio rerio: 進行中
トラフグ Fugu rubripes: 365 Mbp
ミドリフグ Tetraodon nigroviridis
カタユウレイボヤ Ciona intestinalis
線形動物 Nematoda:- マレー糸状虫(フィラリア) Brugia malayi
- Caenorhabditis briggsae
Caenorhabditis elegans: 100.274 Mbp, サンガーセンター、ワシントン大学, 1998年
- マレー糸状虫(フィラリア) Brugia malayi
- 吸虫 Trematoda:
日本住血吸虫 Schistosoma japonicum
マンソン住血吸虫 Schistosoma mansoni
植物 Plantae
シロイヌナズナ Arabidopsis thaliana
トマト Lycopersicon esculentum- タルウマゴヤシ Medicago truncatula
イネ Oryza sativa
ミヤコグサ Lotus japonicus
ポプラ Populus trichocarpa
ブドウ Vitis vinifera: 467.5 Mbp, フランス&イタリア, 2007年
菌類 Fungi
- 子嚢菌 Ascomycota:
- アスペルギルス(コウジカビ類)Aspergillus fumigatus
アスペルギルス・ニデュランス Aspergillus nidulans- アスペルギルス Aspergillus parasiticus
- アスペルギルス Aspergillus terreus
カンジダ Candida albicans- カンジダ Candida glabrata CBS138
- Debaryomyces hansenii
- Fusarium sporotrichioides
- イネバカナエ菌病菌 Gibberella zeae PH-1
- Kluyveromyces lactis
アカパンカビ Neurospora crassa
ニューモシスチス・カリニ(カリニ肺炎) Pneumocystis carinii
出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae
分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe- Yarrowia lipolytica
- アスペルギルス(コウジカビ類)Aspergillus fumigatus
- 担子菌 Basidiomycota:
クリプトコッカス Cryptococcus neoformans- Phanerochaete chrysosporium
- 微胞子虫 Microsporidia:
- Encephalitozoon cuniculi
原生生物
アピコンプレックス門 Apicomplexa[1]:
牛バベシア Babesia bovis
鶏盲腸コクシジウム Eimeria tenella
小形クリプトスポリジウム Cryptosporidium parvum
ヒトクリプトスポリジウム Cryptosporidium hominis TU502
ネズミマラリア原虫 Plasmodium berghei- Plasmodium chabaudi
熱帯熱マラリア原虫(マラリア) Plasmodium falciparum
カニクイザルマラリア原虫 Plasmodium knowlesi
三日熱マラリア原虫(マラリア) Plasmodium vivax
ヨーエリマラリア原虫 Plasmodium yoelii
熱帯ピロプラズマ病タイレリア Theileria annulata
東沿岸熱タイレリア Theileria parva
トキソプラズマ Toxoplasma gondii
- Bacillariophyta(珪藻):
- Thalassiosira pseudonana
- Cryptophyta(クリプト藻):
- Guillardia theta
- Dictyosteliida:
- Dictyostelium discoideum
- Diplomonadida:
ランブル鞭毛虫 Giardia lamblia
- Entamoebidae:
赤痢アメーバ Entamoeba histolytica
- Heterokontophyta(不等毛藻)
シオミドロ Ectocarpus siliculosus 2010年6月
- Rhodophyta(紅藻):
スサビノリ Pyropia yezoensis
シアニディオシゾン Cyanidioschyzon merolae
- Kinetoplastida:
リーシュマニア(カラアザール) Leishmania major- ガンビアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病) Trypanosoma brucei
- クルーズトリパノソーマ(シャーガス病) Trypanosoma cruzi
細菌
2008年10月現在、細菌では780の菌株のゲノム解読が終了している。
古細菌
2008年10月現在、古細菌では53の菌株のゲノム解読が終了している。3ドメインの中では最も解読数が少ないが、発見種も少ないため解読された割合自体は最も高い。ほぼ全ての目に渡って解読種が存在する。
細胞内小器官
葉緑体やミトコンドリアもそれぞれ独自にゲノムを持っており、これらについてのゲノムプロジェクトも進行している。
ウイルス
ウイルスは宿主の遺伝子に依存しているためゲノムサイズが小さい。2008年10月現在、ウイルスでは2700種のゲノム解読が終了している。
メタゲノム
メタゲノム解析は単一菌種の分離・培養過程を経ずに、微生物の集団から直接そのゲノムDNAを調製し、そのヘテロなゲノムDNAをそのままシークエンシングする。そのため、メタゲノム解析により従来の方法では困難であった難培養菌のゲノム情報が入手可能となった。
脚注
^ 和名は、日本寄生虫学会用語委員会 「暫定新寄生虫和名表」 2008年5月22日に基づく。
関連項目
- モデル生物
- ヒトゲノム計画
- バイオインフォマティクス
- 1000人ゲノムプロジェクト
外部リンク
- ゲノムプロジェクト進行状況データベース(英語)